被曝牧草を堆肥化で減容・活用

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東京電力福島第1原発事故で放射性セシウムに汚染された牧草の処理に悩む自治体は多い。

 

宮城県栗原市もその一つで、汚染牧草の堆肥化による減容効果を測る実証実験を5月下旬から始めている。

 

堆肥化を通じて重量や放射線量の変化を確認後、今回作成した堆肥を用いて農作物の生育試験を行い影響を調査するという。

 

実験は今秋に終了する予定で、安全性が確認できれば処理方法に新たな選択肢が登場することになるため、関心が寄せられている。

 

 

 

栗原市では、ロール状に固めた牧草2,592トンが農家で保管されている。

牧草そのものは放射性物質飛散防止のためシートで包まれている。

しかし長期保管によるシートの劣化に加え、鳥獣が荒らす被害も報告されるなど住民不安は高まっている。

放射線量は一般廃棄物(1キログラム当たり8,000ベクレル以下)として処理することができるレベルで、宮城県内には汚染牧草を一般ごみと混ぜて焼却処理した自治体もある。

 

栗原市は汚染牧草の処分方法について、「焼却は焼却灰中に放射性物質が濃縮されるので住民理解を得るのは難しい」と反対の立場を取る。

だが事故から5年が経過し、住民不安を払拭する必要もあるとし「堆肥化で放射性物質が安定化され、安全に自然に戻せる可能性があるかどうかを検証することにした」と市畜産園芸課の三浦圭二課長は話す。

 

実証実験を請け負ったのは、環境プラントを手がける共和化工(東京都品川区)。

同社は、下水処理場や食肉加工場の排水処理などの汚泥を独自の好気性微生物(YM菌)群を使って有機物を分解、堆肥化する技術をもつ。

 

通常の堆肥化では発酵中に60~70度程度の熱が自然発生するが、同社のYM菌の場合は100度超に達するので、汚泥中の有害細菌は死滅。

有機物の分解も促進されるため堆肥化にかかる時間も通常より短くて済む。

佐賀市などの地方自治体で下水汚泥の堆肥化を受託しているほか、技術提供などにより全国28施設で同社の堆肥化技術を用いたプラントが稼働している。

今回は、乾燥した汚染牧草に栗原市内の農家から排出された牛糞、YM菌を含んだ微生物資材などを混ぜ合わせ、発酵槽で堆肥化処理する。

 

5月下旬から始めた1回目の堆肥化では、主原料となる汚染牧草の平均放射線量は1キロ当たり約3,200ベクレル。

牧草重量は2.1トン、混合物の総重量は15.4トンとなった。

発酵槽で空気を送り込みながら混合物を攪拌(かくはん)する作業を6、7回行い、約45日間で発酵させる。

出来上がった堆肥の一部を原料として使い、2回目の堆肥化を行う。

 

発酵槽施設は市有地に建設され、周辺環境への配慮からテントで覆った。

市は稼働中の施設内と外部の空間放射線量測定を定期的に実施。

ホームページで公表しているが、現状では施設内の放射線量の方が外部よりも低い状況だ。

 

2回の堆肥化終了後、牧草重量や放射線量の変化、放射性物質の安定化などについて検証する。

同社は、牧草重量は10分の1程度に減ると想定している。

また、今回作成した堆肥を用いて、7月中旬から栽培試験が始まる予定だ。

葉物や根菜類、牧草、花きなど5種類の農作物を育て、放射性物質の作物への移行の有無などを検証する。

 

堆肥について、国は1キロ当たり400ベクレル以下を暫定許容値としているが、同市は複数の放射線濃度の堆肥を用いて試験を行うという。

共和化工バイオプラント事業本部バイオ事業推進部の松澤泰宏課長は「栗原市での2つの実証実験を通じて、放射性物質の固定に関して安全性が確認されれば、環境影響の少ない処理方法として認知されるのではないか」と話す。

 

下水汚泥の堆肥化は浄化と減容化に加え、リサイクルの仕組みとしても注目を集めており、国も推進する立場を取る。

また利用できなくなった牧草の処分法として堆肥化が一般的でないことからも、その結果に注目が集まりそうだ。

【日野稚子】

 

 

 

SankeiBizより

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