沖縄に自噴する天然ガス

 

沖縄本島の南西部の海岸沿いにある「ロワジールホテル那覇」には、南国のリゾートホテルには珍しい天然温泉がある。

 

地下800メートルから噴出する温泉は水溶性の天然ガスを含むため、希少な国産のエネルギーとして活用できる方策を検討してきた。

 

 

 

ホテルを運営するソラーレ ホテルズ アンド リゾーツが沖縄ガスと共同でガスコージェネレーション(熱電併給)システムの運用を5月1日に開始した。

ホテルの敷地内にあるガス井から気水分離器で温泉水と天然ガスを取り分けて、コージェネレーションシステムで電力と温水を作り出す。

 

発電機が4基の構成で100kW(キロワット)の電力を供給できる。

年間の発電量は76万kWh(キロワット時)になり、一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して210世帯分に相当する。

発電した電力は全量をホテル内で自家消費する予定だ。

 

さらに発電時の排熱を利用して、コージェネレーションシステムから温水も供給する。

地下から自噴する天然ガスを使って電力と温水を供給できるようになり、ホテルが消費する1次エネルギー量は従来と比べて32%少なくなる。

 

沖縄では電力会社が供給する電力の大半が石油で作られているため、電力の消費に伴うCO2(二酸化炭素)の排出量が他の地域と比べて多い。

ロワジールホテル那覇では天然ガスによる高効率のコージェネレーションへ移行することによって、年間のCO2排出量を313トン削減できる見込みだ。

樹齢20年のスギの木が吸収するCO2に換算して2万2000本に相当する。

 

 

 

沖縄では1960年から水溶性の天然ガスの調査が始まり、本島の中南部と宮古島に膨大な量を埋蔵していることが明らかになった。

2014年度の時点で宮古島を含めて県内12カ所に天然ガス井が存在する。

ロワジールホテルの敷地内にある「ロワジールカス井」も、その中の1つだ。

 

ロワジールガス井から噴出する天然ガスは1日あたり668立方メートルにのぼる。

主成分はメタンガスで、温泉に含まれるメタンガスが大気中に放散すると温室効果ガスになる。

この問題を解消するために沖縄県と共同で2002年からガス発電プラントの実証研究に取り組んできた。

 

新たに経済産業省の「平成26年度地産地消型再生可能エネルギー面的利用等推進事業費補助金」の交付を受けて、水溶性天然ガスを利用できるコージェネレーションシステムの導入計画に着手した。

沖縄ガスが設備を運営して電力と温水をホテルに供給する一方、オリックスが設備を所有してリース契約で提供する体制だ。

 

沖縄県のリゾートホテルでは本島の南東部に位置する南城市の「ユインチホテル南城」でも、水溶性の天然ガスを利用したガスコージェネレーションの導入プロジェクトを2014年から進めている。

敷地内に掘削したガス井から天然ガスを抽出して電力と温水をホテルに供給する予定だ。

 

さらに南城市が内閣府の支援を受けて、ホテルを中核に「南城市ウェルネス・スマートリゾート・ゾーン」を展開する構想もある。

天然ガスから作った電力と温水をホテル周辺の医療・介護施設にも供給するほか、コージェネレーションシステムで発生するCO2を回収して農作物の栽培に利用する。

2023年までの長期計画で新たな地域産業の育成に取り組んでいく。

 

 

 

スマートジャパンより

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株式会社トリムはガラスをリサイクルする特許技術でガラスから人工軽石スーパーソルを製造しています。
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