熱源に「貼るだけ」で発電するシート

 

発電所や自動車からの排熱、身近なものではPCから排出される熱など、一度消費されたエネルギーの多くは「排熱」として未利用のまま環境中に放出されている。

 

このうち数%でも再利用できれば、地球温暖化の防止や省エネに大きく役立つ。

 

こうした背景から未利用の排熱を活用する技術の研究開発が進んでおり、その1つとして注目が集まっているのが熱エネルギーを直接電力に変換できる熱電変換材料だ。

 

 

 

積水化学工業はこの熱電変換材料を活用した「カーボンナノチューブ温度差発電シート(以下、CNT温度差発電シート)」の試作に成功し、2018年度を目標とした実用化に向けて実証実験を開始する。

 

同シートには積水化学工業が良先端科学技術大学院大学(以下、NAIST)と共同開発したカーボンナノチューブ(CNT)をベースとする熱発電材料(以下、CNT熱電材料)を活用した。

このCNT発電材料から、同社のナノ材料分散技術や成膜技術などを活用して実証実験可能なサイズのCNT不繊布を作製。

このCNT不繊布を挟むように電極用金属箔とフィルム基板を配列した構造となっている。

柔軟性があり、曲面にも貼りつけることが可能だ。

 

CNT温度差発電シートは、異なる2つの半導体や金属に温度差を与えると電力が発生する「ゼーベック効果」を利用して発電する。

ここでポイントとなるのが「異なる2つの半導体」でなくてはならないという点だ。

 

半導体には正孔が多くプラスの電荷を持つp型半導体と、電子が多くマイナスの電荷を持ったn型半導体がある。

CNTは一般にp型半導体的な極性を示す。

そして簡易にもう1つのn型半導体の特性を持たせるのは難しいとされていた。

しかしNAISTがこのほど塩化ナトリウムとクラウンエーテルを用いてCNTを安定したn型半導体として生成する手法を発見し、CNT温度差発電シートにはこの技術を活用している。

また、鉛、テルルといった毒性物質を全く含まないため、環境親和性も高いシートになっている。

 

 

 

実証用に開発したCNT温度差発電シートは大きさが123×68×2ミリメートルで、重量は5グラム以下。

両面の温度差が50度の場合、475μW(マイクロワット)の電力を発電できるという。

 

積水化学工業では開発中のCNT温度差発電シートの将来の用途として、ワイヤレスセンサー向けのエネルギーハーベスティング(環境発電)への活用を想定している。

特に乾電池や太陽光発電では対応が難しい高温多湿な環境下で、定期的な交換・診断が難しく、かつ昼夜問わず常時監視の必要な設備のセンサー用電源などの用途を想定しているという。

 

具体的にはビルや大型商業施設の地下施設、空調配管、エレベーターシャフト、工場や大型倉庫、コンテナや船舶などの輸送機器での利用を検討しているという。

今後は2018年度の製品化に向けてさらに実証を進めるとともに、デバイス開発、生産プロセスなどサプライチェーンの各段階におけるパートナーの探索も進めていく方針だ。

 

 

 

スマートジャパンより

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株式会社トリムはガラスをリサイクルする特許技術でガラスから人工軽石スーパーソルを製造しています。
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