海水アンテナ技術

 

三菱電機は、海水を空中に噴射し、作り出された水柱を通信やテレビなどのアンテナにできる、海水アンテナ技術「シーエアリアル」を開発した。

 

27日に行われた説明会で、箱の中に設置された噴水を使って、地上デジタルテレビ放送(フルセグ)を受信するデモンストレーションが披露された。

 

 

 

「シーエアリアル」は、海水で作った水柱をアンテナにする新技術。

ポンプで水をくみ上げて噴き出すと、その噴水による水柱をアンテナにしつつ、噴水部に用意した新開発の絶縁ノズルの効力で、ケーブルに電波が乗る。

 

技術の中核は、新開発の絶縁ノズル。

今回披露されたものは、一見すると金属の箱だが、その内部を見ると、海水を噴出する穴の横に高周波ケーブルを繋ぐ部分があり、その周辺は空洞となる。箱の大きさ(縦+横)が、利用する周波数帯の1/4程度の長さになるよう調整されており、水柱に流れる電波が海水中に放出されないよう、打ち消しあう仕組みになっているという。

海水中に電流を流さずに、アンテナ送受信部となる水柱だけに高周波の電流を効率よく流すよう調整し、アンテナ効率が70%に達した。

一般的にアンテナ効率は、金属(銅)の効率は100%近く、水道水はほぼゼロ。

携帯電話などに内蔵される通信やテレビのアンテナは、おおよそ30~80%程度の効率とのことで、この70%というスペックでフルセグ受信が可能になった。

 

利用する周波数帯に応じて水柱の高さをカスタマイズする。

デモンストレーションはテレビ放送の受信だったが、FMラジオや携帯電話などにも応用できる。

ポンプさえあればアンテナを構築できることから、鉄塔などの大規模な建築物が必要ないこともメリットの1つ。

海水浴場などでFMラジオ局のアンテナとしたり、災害発生時に携帯電話の臨時基地局のアンテナにしたりする、といった用途が期待されている。

水柱の太さも性能に影響し、太ければ太いほど性能がアップするとのことだが、その分、ポンプもより強力なものにする必要があるという。

このあたりは求める性能と、運用する場所の状況などによって選択肢が変わってくるようだ。

 

水柱は、放物線を描くような形となり、頂上に達するまでの部分がアンテナとして機能する。

水が落ちてくるところでは電波は減衰する。

着水するあたりではほぼ電波がない状態になる。

水柱1つで、1種類の電波という形になる一方、複数の水柱を噴射してそれぞれにケーブルを繋いでおくことで用途が広がるとも期待されている。

公園にある噴水のような形であればパラボラアンテナのような機能を持たせて、指向性のある鋭いビームのような電波を扱えるのではないか、と三菱電機情報技術総合研究所 アンテナ技術部長の宮下裕章氏。

 

 

 

月に一度、研究員がアイデアを出し合ったり議論したりする時間を用意しているという同社。

今回の海水アンテナは、三菱電機の研究所の若手による「海水って電気が流れますよね。アンテナにできないですかね」という一言から検討がスタート。

「やってみようか、で、やってみたらできた」(宮下氏)という。

 

ガラスなどの筒に海水を通して試してみたところ、機能することがわかり、およそ1年かけて今回の発表にこぎ着けた。

 

デモでは、東京スカイツリーから発射されたフルセグの電波を、ビル街の中にある会議室で受信。

ビルなどに反射して届く電波で、ときおり映像が乱れるものの、ほぼ安定した状態で受信していた。

水柱は透明な箱の中にある形だが、屋外に設置した場合の風の影響などが今後の課題。

ただ、これも噴射の勢いを強めて、水柱を安定した形状にすることで影響を避けられそうだという。

 

ひとまずユニークな技術ということで、三菱電機は今回発表。

商用化や今後のスケジュールは未定で、「面白いので積極的に発表して、ご意見を聞いてアプリや用途を見つけたい」(宮下氏)という。

 

 

 

Impress Watchより

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この記事を書いた人

株式会社トリムはガラスをリサイクルする特許技術でガラスから人工軽石スーパーソルを製造しています。
世の中のリサイクルやエコに関する最新情報をお届けして参ります。

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