« 11月29日~(東京)地域先端テクノフェア2006に出展致します。 | メイン | 青森で環境演劇コンテスト »

2006年11月17日

石原産業のフェロシルト問題

産業廃棄物をリサイクル製品と偽って販売したとの疑いで元幹部が逮捕された石原産業のフェロシルト問題。法人としての石原産業も両罰規定で書類送検され、事件は一つのヤマ場を越えた。

だが、埋設したフェロシルトの回収は大幅に遅れ、住民の不信感は高まるばかり。
同社が撤去を拒む場所まである。
企業の社会的責任も問われる中であえて回収を拒否する裏には、「掘るに掘れない」事情がある。

1年前の2005年10月18日。
中間決算の記者会見で、石原産業の田村藤夫社長は「2006年9月末には回収が終わる見通しだ。回収のめどがつけば、しかるべき経営責任をとる」と宣言した。
だが、フェロシルトの全量回収のめどは今も立っておらず、田村氏は社長のままだ。

フェロシルトは三重、愛知、岐阜、京都の4府県の計35カ所に埋められた。
9月末時点で撤去が未完了なのは10カ所。
その中で唯一未着手だった岐阜県瑞浪市も10月に石原産業がフェロシルトの埋められた土地を買い取ることで合意し、ようやく回収作業に乗り出す。

処分場の確保に課題を残すものの、2008年1月には回収が完了する見通しという。
回収作業は順調に進んでいるように見えるが、実はそうではない。
5月、愛知県の撤去命令の取り消しを求めて同社が提訴した瀬戸市幡中地区の回収分は、対象に含んでいないのだ。

石原産業の言い分は、こうだ。
幡中地区では地下30㍍にフェロシルトが広範囲に埋められており、周辺土の回収も合わせれば最大200万㌧となり、回収できる範囲を超えている。
発がん性物質の六価クロムが検出されていないことや、回収作業に伴うダンプカーの往来で二次災害を引き起こす可能性もある――。

石原産業は昨年7月、製造会社として施工地域の不安を取り除くことが責務として自主回収を宣言。
約100億の撤去費用を計上したが、見通しは甘かった。
掘削調査の結果、回収費用は326億円に膨らんだ。
幡中地区での回収には、これとは別に最大600億円の追加費用が必要と予想されている。
2006年3月期末の資本合計が473億円の同社にとり、600億円はあまりに重い。

回収費用という「後ろ向きのカネ」をどう確保するかも課題だ。
石原産業は金融機関を奔走。
塗料原料で業績が堅調な酸化チタン事業など中期的な収益計画を説明しながら理解を求め、幡中地区を除く回収費用の調達にめどをつけた。
だが、ある幹部は「利益を生まないカネを、銀行はこれ以上は貸してくれないだろう」と危機意識をにじませる。

頼みの綱は、かつて経営危機を救ってくれた三井物産だ。
石原産業は1999年3月期に167億円の最終赤字を計上。経営危機を乗り切るため、1999年8~9月に実施した第三者割当増資で、最大の引き受け先となり、筆頭株主になったのが三井物産だった。

だが、三井物産は9月末に出資比率を15.8%から14.9%へと下げて持ち分法適用会社から外し、石原産業の損益を連結決算に反映しないようにした。
筆頭株主の立場は変わらないが、フェロシルト問題によるイメージ悪化を嫌った可能性もある。

石原産業は17日、田村社長が出席して大証で2006年9月中間期の連結決算を発表する。
1年前の“約束”が実現していないことについて、地域にも株主らに対しても明確な説明責任を果たす必要がある。

日経産業新聞より

投稿者 Melody : 2006年11月17日 16:50