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2008年05月27日

【北海道】規格定まらぬバイオ燃料

誇らしげだった口調がにわかに陰りを帯び始めた。
「状況は厳しいですね。普及というレベルにはとても……」

北海道洞爺湖サミット(7月7~9日)の開催地、胆振管内洞爺湖町。
1月から、町内のホテルで回収した廃食油を温暖化要因である二酸化炭素(CO2)の排出を抑えるSVF燃料に精製、公用車2台に活用する試みが始まっている。

ところが、町の取り組みが民間にどう波及しているかを問うと、担当職員は一転、顔を曇らせた。
「国内はSVFやバイオディーゼル(BDF)など、エコ燃料の生産量が少な過ぎる。だから企業側も安定して燃料が手に入るか不安があり手を出さない」と担当職員。

SVFについて、町にも地元企業から問い合わせはあったが、実現していない。
SVFやBDFの導入には、車の改造や精製装置などで最低でも100万円前後が必要。
景気が厳しい中、企業は経営指標に即座に表れない投資には踏み出しづらいのだ。


担当職員の嘆きは、エコ燃料の主流になりつつあるバイオエタノールの生産量が如実に示している。
1対27万対37万。
日本の2005年の生産量を1とした場合の米国、ブラジルとの比較だ。
日本の30㌔㍑に対し、米国は800万㌔㍑。
原料穀物の生産量の少なさもあるが、工業国で人口は日本の7%程度のスウェーデンですら約6万㌔㍑だ。

京都議定書(1997年)で温室効果ガス6%削減を課せられた国は、2010年までにバイオエタノールを重油換算で年50万㌔㍑導入する計画を策定。
民間企業に補助金を交付し、生産実験を始めている。

このうち「富久娘」などの日本酒会社を傘下に持つオエノンホールディングス(東京)は苫小牧市の工場で、原料を米にした施設建設をスタート。
2011年中に1万5,000㌔㍑を生産するのが目標だ。

秋野利郎・生産担当役員によると、CO2削減で企業イメージ向上を図り、将来性のあるバイオエタノールの生産ノウハウを確立するのが狙いだ。
「ただ……」。
ここでも秋野役員の口調は暗い。
「エタノールは自動車燃料用に販売する予定ですが、本当に買い手がつくのか不安があるんです」

バイオエタノールはガソリンに混ぜて使う。
直接混ぜる方式にしたい環境省に対し、石油元売り各社で作る石油連盟は、ガソリン精製の副生成物をエタノールに混ぜた後にガソリンと混合する方式を主張。
規格が定まる見通しが立たない。

連盟側は、直接混合はガソリンスタンド側に数百億円の設備投資が必要になり、さらに汚染物質も増えると主張。
環境省は、連盟の方式では製造コストがかかるうえ、主要国は直接混合を採用し、日本だけが異なるのはおかしいという。

事情に詳しい道の担当職員は「連盟を後押しする経済産業省と環境省の対立とメンツ、業界の利権の問題。こんな状況で企業もバイオ燃料の製造や使用に踏み出す訳がない」
これもサミット議長国の現実だ。
地球温暖化を主要テーマに開催される北海道洞爺湖サミットまで1カ月半。
豊かな自然に恵まれている道内にも、温暖化の影響が忍び寄っている。
各地の課題と対策の最前線を追った。

◇SVF
ストレート・ベジタブル・フュエルの略で、廃食油をろ過したディーゼル車用燃料。
化学処理するバイオディーゼル燃料(BDF)よりも安価で有害物質も少ない利点があるが、車に専用のタンクを設置する必要があり、BDFや穀物を発酵させるバイオエタノールほど一般的ではない。

毎日新聞より

投稿者 trim : 2008年05月27日 11:45