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2008年11月28日

森の案内人

「このハリギリの木は樹齢200年。肥よくな土地に育つので開拓者はこの木を目標に開墾地を探しました。ゲタの材料にもなります」。

11月24日、新潟県の当間高原で東京電力が開催した「エコツアー」。
樹木医の資格を持つ社員の説明に約10人の参加者はしきりにうなずいていた。

環境部自然環境グループの笛木裕二課長(54)は2005年から始まったエコツアーのインストラクターとして、一般参加者約800人を当間高原や尾瀬ヶ原の森へ案内してきた。

「森の豊かさを実感し環境意識を高めてもらう」という東電の社会貢献活動の一環だ。

「この木の名前は?」「あの大きな鳥は?」――。
森に関する質問なら答えに詰まることはない。
幼少期から現在まで森に親しんできた笛木氏にとっては当然だ。


群馬県生まれの笛木氏の子供時代の遊び場は森。
木登りが得意で「高さ30㍍の木に毎日のように登っていた」。
ビル10階以上の高さだが、「怖いと思ったことはなかったし、折れそうな枝はなんとなくわかったからけがもなかった」。
樹木医の素質はこのころからあったのかもしれない。

東電入社後は送変電所建設所土木課に配属。
施設建設のために木を切り、工事が終わると植林する仕事を続けていたが、根がつかずに枯れてしまう樹木が少なくない。

「どうすれば植えた木がすべて育つようになるのか」。
この疑問を解消するために造園管理士や樹木医の資格を取得し、樹木に関する知識を深めていった。

東電が保有する森林は、尾瀬地区の約16,000㌶を筆頭に計27,000㌶と、製紙会社を除けば全国でも有数の規模だ。
管内に散らばる支社・営業所や送変電所の樹木についても相談を受ける。

「桜の木に元気がない。診て欲しい」。
神奈川県高津支社からはこんな相談があった。
早速診断してみると、樹齢およそ60年のソメイヨシノはやや疲れ気味。
朽ちた枝を落とし、肥料を施した。
東京都八王子市ではスギ並木の治療と保全を依頼された。

樹木への愛着からエコ商品も生まれた。
水力発電所のダム管理をしていた群馬支店時代にダムにたまる枯れ葉を腐葉土にして近隣の農家に販売。
雪の重みで倒れてしまい、設備保守の障害になるために伐採した竹を焼いて加工して「東電竹炭」に商品化した。
いずれも森の財産を少しでも無駄にしたくない思いが反映している。

2005年から始めたエコツアーは11月で終了し、笛木氏の活動も一区切りとなる。
東電グループの森林保全の取り組みは支社、支店単位で広がっている。
管内のあちこちから樹木の相談を受け、飛び回る機会が増えそうだ。


日経産業新聞より

投稿者 trim : 2008年11月28日 13:36