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2009年01月03日

富士山に鉄道構想

山梨県側の富士山の麓(ふもと)から5合目まで、登山者や観光客を電気鉄道で輸送する一大構想が持ち上がっている。

自然界への影響を懸念する声も聞かれるが、構想を打ち出した富士五湖観光連盟(山梨県)は「電気鉄道による悪影響は少ない」と自信をみせ、「首都圏から乗り換えなしの5合目直行便」の実現にも夢を膨らませている。

「なぜ富士山に鉄道がなかったのか。その方が不思議です」。
同連盟の堀内光一郎会長は首をひねる。

富士山5合目には、麓から有料道路「富士スバルライン」か林道を利用してマイカーやバスで行くか、麓から歩いて登る方法しかない。
さらに、冬季は降雪で通行止めとなり、富士山の実質観光シーズンは4月から11月ごろまでだ。

鉄道構想は昨年11月、観光連盟の正副会長会議で打ち出された。
麓の有料道路ゲート付近に始発駅を設け、有料道路上に単線の線路を敷く。
5合目ロータリーまでとすると全線約30㌔、平均勾(こう)配(ばい)5%。
観光客が散策できるように途中に4駅を設置する。

車両は電気動力で200人乗り車両を4両連結し、1便で800人程度を運ぶ。
建設費は概算で600億円から800億円程度を見込んでいる。

堀内会長は「スイスでは100年も前から登山電車が走っている。マイカーと違い電気鉄道なら公害はなく、通年営業も可能。既存の有料道路を軌道に利用すれば新たな森林伐採が少なく、自然環境への負荷は減る」と有益性を強調する。

富士山では山梨、静岡両県とも夏季の最盛期、渋滞した車の排ガスが動植物に悪影響を与えるため、マイカー乗り入れを2週間前後規制している。
平成20年夏には富士登山の人気が高まり、両県合わせて夏山2カ月間だけで30万人以上が入山。
ごみや屎(し)尿(によう)問題が再浮上し、登山者の入山規制の議論も起きた。
鉄道が実現すれば、乗車定員があることから入山者を制限する効果も期待できるという。

昨年11月には県議8人が「富士山の新交通システム等議員検討会」を結成。
武川勉代表は「雪に影響されない交通手段で、年間を通して観光客に富士山へ来てもらえれば地元経済の下支えになる」と歓迎する。
さらに、一部からは「東京方面から5合目までの直行便を設けたら利便性が高まる」との意見もある。

これに対し、懸念する声もある。
地元富士吉田市の堀内茂市長は「富士山では雪崩が発生し、安全面での問題がある。冬季に観光客が入ることで自然界のバランスが崩れるのではないか」と話す。
富士山では過去、5合目と山頂をトンネルケーブルカーで結ぶ計画や麓と5合目にケーブルカーを開設する案が検討されたが、いずれも自然環境保護から見送られた。

しかし、堀内会長は「電気鉄道は自然環境への影響は少ない」と言い切り、「富士登山鉄道建設協議会」を設置して具体的計画を打ち出す考えだ。


産経新聞より

投稿者 trim : 2009年01月03日 19:22