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2009年01月28日

農政改革 減反見直し焦点

低迷する食料自給率の向上などに向けた農政改革が始動した。

農林水産省は27日、農政の指針となる基本計画の5年に1度の見直しに着手。
政府全体でも関係閣僚会合の設置を決めた。

生産調整(減反)を含めたコメ政策見直しや自給率向上策などが焦点。
石破茂農相は抜本改革に意欲を示すが、自民党、民主党は一定の生産調整が必要との立場。
戦後続いてきたコメ農政が大きく転換するかどうかは不透明だ。


食料・農業・農村政策審議会と企画部会の合同会議を都内で開き、農相の諮問を受ける形で議論を開始。
農政全般について来年3月に審議会が答申し、政府が閣議で決める。
生産調整見直しなどの重要課題は、近く開く関係閣僚会合や特命チームが今春をめどに方向性を示し、基本計画に反映する。

計画改定で焦点になるのがコメ政策。
現在は政府が生産目標を立てたり結果的に買い支えたりして関与している米価と、農家の所得対策をどうするかの2点がポイントになりそうだ。

石破農相は「タブーなく議論する」と強調。
審議会では複数の委員から生産調整について「30年以上予算を使ったが、農家の意欲や所得は向上せず、耕作放棄地だけが増えた」などと、根本的に見直すべきだとの意見が出た。

近年では穀物価格が一時急騰し、長期的な世界の食料不足の懸念が高まっている。
日本は農業の生産性や自給率の向上が課題となる。

主食用米は作付面積を減らし、麦などに転作する生産調整をしている。
作りたくても作れない農家がいたり、世界貿易機関(WTO)のルールで年間77万㌧の輸入が必要だったりという制度を疑問視する生産者や消費者もいる。

国がコメを一括して輸入・販売する国家貿易や生産調整をやめると、コメが余って価格が下がる可能性が高い。
自民党も民主党も目標数量を設ける生産調整は必要との立場で、仮に生産調整見直し案がまとまっても難航しそうだ。

米価が下がると農家の収入が減るため、所得対策の拡充も課題になる。
現行制度では長期に米価が下がれば補てんしきれない。
東大の生源寺真一農学部長は「国による米価維持は限界。段階的に生産調整を緩めるべきだ」と指摘する。
米価が下がれば消費者にも利点があり、税金を使って農家の所得対策を手厚くすることに理解を得やすいとみる。

農相が昨年末から見直しの必要性を繰り返す背景には、WTO交渉への危機感がある。
仮に合意すれば高関税で保護しているコメの関税率の削減が求められたり、輸入義務量が増えたりする可能性がある。

改革のカギを握るのは今秋までにある衆院選だ。
選挙前には農村票を失うような抜本策は打ち出しにくい。
一方で自民党は直近の参院選で農家の戸別所得補償制度を打ち出した民主党に票を奪われたとの見方も根強い。

農相が自民・公明党政権として臨む選挙に向け、コメ政策見直しに関連して所得対策をどう打ち出すかが改革全体を占うことになりそうだ。


日本経済新聞より

投稿者 trim : 2009年01月28日 14:27