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2010年05月03日

「環境コンシェルジュ」


環境省は、各家庭に対して二酸化炭素(CO2)排出量の効果的な削減方法をアドバイスする「環境コンシェルジュ」の育成・派遣事業に乗り出す。

この専門家は、ホテルの案内係のような心配りで省エネ型家電の買い替え方など環境行動の仕方を伝授する。

まず今夏以降に試行事業を始動させ、全国の約5,000~10,000世帯に環境コンシェルジュを派遣して効果を検証。
来年度から普及活動に移行する。


環境コンシェルジュの役割は、各家庭が地球温暖化対策で果たす役割に気づいてもらうことと、それを具体的なCO2削減行動に結びつけること。

育成事業の主体となるのは、国と連携して温暖化対策の普及啓発活動などを地域単位で行う「地球温暖化防止活動推進センター」。

同省は今後、全国に約50ある地域センターに対し試行への参加を呼びかけ支援する。

参加する地域センターは、環境コンシェルジュに役立つ知見を持つ人材を、地域に根ざす電気店や電力・ガス会社などの協力を得て発掘。
さらに、家庭のエネルギー消費状況を温暖化対策の観点から分析し説明する能力を伝授し、その上で家庭への助言活動を任せる。

助言の範囲は、太陽光発電の導入や家電の購入・使用方法から、住宅のリフォームを含む暮らしの見直し方まで多岐にわたる見通しだ。

試行の対象地域は都道府県ごとに設定し、それぞれ約200世帯とする。
すべての地域センターが手をあげた場合、全国では最大で約1万世帯の試行が実現する。
2020年を視野に「100万世帯に環境コンシェルジュを普及させる」(地球環境局)ことも狙う。


今回の事業の背景には、家庭部門からのCO2排出量増加を抑制したいとの思惑がある。
同部門の2008年の排出量は1990年比で34%増。
鳩山政権が掲げる温室効果ガス削減目標「2020年までに1990年比25%削減」を達成するためには家庭のCO2排出を2008年から半減することが必要だ。

ただ、家庭を低炭素型に変革することは簡単ではない。
環境省は、各家庭でエネルギー消費実態や削減余地などを「見える化」するモデル事業を行った。

これは、約200世帯を対象に電気消費量やCO2排出量などを知らせる家電計測器「省エネナビ」を設置し見える化の効果を検証するもので、昨年8月から2月にかけて行った。

その結果、省エネの要請を受けずにナビを置いただけの世帯が冷暖房の設定温度を意識するようになるなど、設置の前後で一定の変化が読み取れた。

ただ、「ナビの効果で家電の電気消費量が削減した」という形で明確に実証することは難しく、見える化と検証の方法で工夫の余地を残した。

これを踏まえて環境省は、約1,000世帯規模に拡大したモデル事業を今夏にも開始し、有効な見える化策を引き続き探る。


日本総合研究所の三木優主任研究員は、世帯数の増加や機器多様化でCO2排出量が膨らむ家庭への対策の難しさに理解を示しつつも、「個人の努力や意識変化を期待する見える化の政策は、インセンティブがない状態では効果が限定的」と手厳しい。

むしろ、省エネ機器をめぐるメーカー間の性能競争を促し、それによって「消費者が省エネ性能が高い商品を選ばざるを得ない状態をつくった方が合理的だろう」と主張している。
【臼井慎太郎】


フジサンケイ ビジネスアイより

投稿者 trim : 2010年05月03日 14:07