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2011年11月07日

「衣料品からバイオエタノール製造」

ユニクロやH&Mなど低価格ながら高品質のファストファッションが人気を集め、数多くの衣料品が消費される一方、衣料品は古着店によるリユース以外、リサイクルの選択肢が少ない。

リサイクル事業を手がける「日本環境設計」(東京都千代田区)は、衣料品からバイオエタノールを製造する技術を開発。

衣料品メーカーや流通企業とも連携して回収システムを整備、新たなバイオエタノール製造システムの構築に乗り出した。


バイオエタノールは現在、トウモロコシなどの穀物から作られるのが主流だが、製造に必要とされるセルロース成分は綿にも含まれる。
同社はこれに着目、大阪大の研究室との協力により、2007年に綿を特殊な溶剤で溶かし、バイオエタノールを製造する技術を開発した。
綿1トンから最大700リットルのバイオエタノールが製造できる。

衣料品は必ずしも綿100%ではないが、この技術では綿成分だけが溶剤に溶けるため、ポリエステルなど他の繊維は溶け残って分離される。
溶け残った他の繊維はコークスや炭化水素油などとして工業用の原燃料として活用される。
現在、製造されたバイオエタノールは、染色会社のボイラー燃料として販売されており、食料品以外から次世代燃料抽出の道を開いたともいえる。

当初、バイオエタノール1リットルを製造するのに1万円以上かかったが、試行錯誤の結果、セルロース成分を効率的に溶かす方法を突き止め、販売価格を1リットル200円程度まで下げることに成功した。
高尾正樹専務は「近い将来、日本国内でバイオエタノールを燃料とする自動車が開発されれば、大量生産によるスケールメリットによりさらなる低価格化の可能性も出てくる」と期待を寄せる。

問題は、原料となる綿衣料の安定確保が難しい点にある。
中小企業基盤整備機構の調査によると、日本では年間約200万トンの繊維製品が廃棄され、半分の約100万トンが衣料品だ。
衣料品に含まれる綿成分の割合は平均50~60%で、年間50万トン以上のエタノール原料が不要となっている計算だが、「古着への活用も含め、衣料品のリサイクル率は現在15%程度」(高尾専務)にとどまる。

ペットボトルのように、廃棄される衣料品の約8割が回収できれば、年間最大28万キロリットルのバイオエタノールが製造できる計算となるが、自治体などによる廃棄衣料の回収はほとんど行われていないのが現状だ。


そこで同社は、衣料品を製造・販売する各メーカーや流通企業に呼びかけ、「FUKU-FUKUプロジェクト」と銘打った衣料品回収活動を立ち上げ、運営を担っている。

同プロジェクトは2010年6月からスタート、現在はイオンリテールや丸井グループ、良品計画など8社363店が参加する。
参加企業は自主的に年数回程度、消費者から衣料品を回収するキャンペーンを実施し、回収した衣料品を日本環境設計に提供する。

廃棄物は原則、自治体を超えて配送することができないため、参加企業は衣料品の提供者に粗品を渡すなど、「商品」として回収する。
今年8月までの回収量は約30トンにとどまるが、規制緩和の兆しもみられており、参加企業のコストが軽減される可能性も出てきた。
高尾専務は「ペットボトルなどはメーカーが積極的にリサイクルを行っており、衣料品もそうあるべきだ」と話している。
【佐久間修志】


フジサンケイ ビジネスアイより

投稿者 trim : 2011年11月07日 10:55