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2012年03月12日

産環協がカーボンフットプリント制度

製品のライフサイクルを通して排出する二酸化炭素(CO2)の量を“見える化”する「カーボンフットプリント(CFP)」制度の普及に向けた民間主導の動きが始まる。

産業環境管理協会(産環協)が国の試行事業を4月に引き継ぎ制度に参加しやすい環境づくりを進める一方、CFP制度利用企業の呼びかけで環境活動を啓発する企業コンソーシアム(共同事業体)が今夏にも立ち上がる。

CFP制度は、原材料調達から廃棄・リサイクルに至る製品のライフサイクルを通じて排出されたすべての温室効果ガスを「CO2排出量」に換算する仕組み。
基本は、その量を「はかり」のマーク内に表示する。

これまで経済産業省主導による試行事業として、2009年度から3年計画で進められてきた。
その間にCFPマークの表示が認められた製品は約460品目。
業種でみると、食品から衣料品やオフィス関連製品までと多岐にわたっている。

産環協は、この実績を引き継ぎながら民間主導の「新CFPプログラム」へと移す。
これを機に、CFPマークを製品に付与するまでの一連の流れを効率化していく計画だ。

見直し対象の一つが、CO2排出量の算定ルール「商品種別算定基準(PCR)」の原案を策定し、認定委員会の審査を受けるというプロセス。
試行期間中に認可した約70のPCRから共通項を抽出し、それを「分野別ガイド」として整える。
PCRがない製品にマークを付けたい申請者は、ガイドを利用することでゼロからPCRを作る手間が省ける。
また、従来は同業他社や利害関係者が参加するワーキンググループを設け、PCR原案を作っていた。
今後はグループ方式だけでなく、個別企業でも作成できるようにする。
PCRの信頼性を担保しながら、制度の敷居を下げたい考えだ。

CFP制度を改善する狙いは「認知度が低いという壁を乗り越えたい」(産環協の壁谷武久・製品環境情報事業センター所長)との思いだ。
このためCFP導入企業と連携して普及策の全国展開も目指す。
「CFPマークは環境情報開示とCO2削減に努力する企業の意思表示。
数字の背後を読み取ってほしい」とする壁谷センター所長はマークの対象製品を早期に1,000品目に引き上げたい考え。

業務用食器メーカー大手の三信化工(東京都港区)は経産省の試行事業に参画してきた1社。
学校給食用の樹脂製や強化磁器製食器で表示認可を取得。
CFPを自社事業が依存する資源の抑制と有効利用につなげる一方、環境対策市場の拡大も急ぐ。
その一環として、小中学生などの消費者を対象に、環境啓発に取り組む異業種コンソーシアムを組織する。

CFP関係企業や消費者団体などに参加を呼びかけ、子供の環境や省資源意識を高める目的で、「食器の一生」を学べるすごろくを企画し教育現場に生かす。
環境教育の経験を土台に「すごろくを他業種にも広めたい」(環境・品質管理部の海老原誠治氏)と意気込む。
これに加え、コンソーシアムの知見を結集し教材や啓発策を開発・検証するほか、開発成果の海外発信も検討したい考え。

「消費者が製品を選択する際の判断材料の一つに『環境』がなければいけない。そんな競争環境を作る動きを牽引(けんいん)したい」。
日本ハムの宮地敏通執行役員は、ウインナーやロースハムなど4品目にCFPをいち早く表示し販売した狙いを明かす。
ハム・ソーセージ類の表示効果を検証した上で、ピザやハンバーグなど加工食品に広げることも視野に入れている。

今回の民間運用は、CFPの国際標準規格「ISO14067」の策定作業に連動した形で動き出し、7月に新スキームでPCRの認定申請受け付けを始める。
日本で修練した低炭素製品認証マークは、環境技術力を世界に伝える有効な手段になり得る。
企業や消費者の関心を集める挑戦はこれからが本番だ。
【臼井慎太郎】

フジサンケイ ビジネスアイより

投稿者 trim : 2012年03月12日 15:03