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2012年07月23日

海洋温度差発電

海水の温度差を利用して発電するクリーンな再生可能エネルギー「海洋温度差発電」の実証事業が沖縄県を舞台に動き出す。

取り組むのは、IHIプラント建 設、同分野の研究開発を続けるベンチャー企業のゼネシス(東京都中央区)、横河電機だ。

3社は来年3月までに実証設備を設置し、連続運転を見極める。
実用化を巡る米仏との先陣争いが激しさを増す中、発電技術の進化を急ぐ考えだ。

海洋温度差発電は、海の表層部にある「温かい海水」と、水深600~1,000メートル程度に存在する「冷たい深層水」の温度差を利用する発電技術だ。

表層水でアンモニアなどを加熱・蒸発させ、その蒸気で発電用タービンを回す。
発電後の蒸気は深層水で冷やして液に戻し、発電に再利用する。

化石燃料を使わないため二酸化炭素(CO2)の排出削減に貢献できるうえ、海水温は変動が少ないことから安定的な発電が可能だ。
このため、昼夜にわたり電力の基礎需要をまかなう「ベース電源」として注目を集めている。

今回、沖縄県が実証事業を主導し、それを3社が受託した。
沖縄本島の西に位置する久米島の「沖縄県海洋深層水研究所」に出力100キロワット級の実証プラントを設置、来年4月から2年計画で連続運転を行う。

ゼネシスエンジニアリンググループの岡村盡(しん)課長は「世界に長期連続運転の実績はまだない。一歩でも世界をリードしたい」と意気込む。

実証プラントは、同研究所がくみ上げた深層水の一部を利用して稼働、長期運転に向けた課題を洗い出す。
海水を通す各種機器に微生物や汚れが付着した場合の影響などを調べる。

海洋温度差発電について、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は「2015年に1,000キロワット級の実証プラントを整備し、20年に1万キロワット級商用プラントの運用開始」とのロードマップを描く。
発電コストの目標は、20年時点で1キロワット時当たり20円とした。
3社は、その道筋を切り開く一助を担う。

発電プラントは2種類ある。
今回のような陸上設置型の場合、発電に使った後の深層水を産業振興に役立てられる。
国内最大の取水量を誇る久米島町では、冷たく細菌数が少ない深層水をクルマエビ養殖や野菜生産などに生かしている。

一方、大規模発電に特化する場合は、海にプラントを浮かべる洋上浮体型が向く。
IHI営業グループの磯本馨主幹は「洋上での揺れを抑える浮体構造物を設置した経験などを生かし、商用プラントの下地を作りたい」と意欲的だ。

深海から多量の海水をくみ上げるため、実験段階でも費用が膨大。
商用クラスの建設費は数百億円とされ、実用化を阻んできた。
とはいえ、世界的なエネルギー政策の見直しの中、米ロッキード・マーチンがハワイ沖の大型実証プラント建設を狙うなど、海洋温度差発電をめぐる開発競争が再燃している。

それだけに、日本の強みを生かす必要性が増している。
一つが、海水の熱を発電装置に伝える「熱交換器」向けのチタン板で、チタン生産技術で優位に立つ。
電力供給を監視・制御する技術水準も高く、横河電機の金井秀樹・新エネルギープロジェクトリーダーは「経験を実証事業に生かしたい」と語る。

ゼネシスは、海洋温度差発電の基礎研究で先行する佐賀大海洋エネルギー研究センターと長年にわたり連携してきた。
実証事業を機に、沖縄県の研究機関との連携も密にし、温度差発電プラントを海外に輸出する足がかりも作りたい考え。

再生可能エネルギーの普及が課題となる中で、海に囲まれた日本は海洋エネルギーの積極利用も求められている。
その技術を世界に広げる意味でも、今回の実証結果に期待がかかる。
【臼井慎太郎】

SankeiBizより

投稿者 trim : 2012年07月23日 13:49