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2012年10月01日

東北祭りでCO2相殺

イベントや会議などの開催に伴い排出される二酸化炭素(CO2)を、他のCO2削減努力で生まれた排出枠で相殺する―。

そんな仕組みの「カーボン・オフセット」が地域や企業の間で広がり始めた。

東北祭りのオフセットを通年で行う計画が立ち上がる一方、リコーリースがオフセット型株主総会の拡充に乗り出した。


東北祭りのオフセットは、東北経済産業局の委託を受けて環境コンサルティング会社の東北緑化環境保全(仙台市青葉区)が行う企画。
同社は、東北6県の商工会議所が結成した「東北まつりネットワーク」と連携して、昨年夏に具体化させた。

その第1弾企画に参加した6県の夏祭りは、「青森ねぶた祭り」「盛岡さんさ踊り」「仙台七夕まつり」などの11団体。
その開催に伴い発生した29トンのCO2を、地元中小企業9社のCO2削減努力で創出された排出枠で帳消しにした。

そこで着目した環境負荷の1つが、豪華な装飾が施された祭りの出し物「山車(だし)」内の照明用発電機で使う燃料の消費量だ。
さらに、イルミネーションや提灯での電力使用に伴うCO2なども対象にした。

今夏の第2弾では祭りの参加数が21団体に倍増した。
CO2発生量は算定中だが、約40トンを想定している。

この実績を土台に、夏限定のオフセットを通年企画に発展。
仙台市繁華街のイルミネーションを灯す今冬のイベントがオフセットに参加予定だ。
さらに旅行会社と連携し、ツアー客の移動に伴うCO2相殺も同時に行う構想も温めている。

会議型オフセットで先行するのがリコーリース。
同社は、約400人の株主が来場した昨年6月の定時株主総会にオフセットを組み込んだ。
総会の開催に伴い排出された6,305キログラムのCO2を排出量取引によって埋め合わせた。
今年の総会では1万3,442キロの排出量を相殺した。
CO2の測定範囲は、「株 主・主催者の移動」や「会場で使う電力・水道」から「招集通知書などの紙の使用」までと幅広い。

課題は主催者側の環境負荷にさらに踏み込み、送付物の印刷時のCO2まで把握すること。
これらをクリアし来年以降には「CO2全量を相殺し総会をカーボン・ニュートラル(炭素中立)に発展させたい」(環境・社会貢献推進室)という。

オフセットは、温室効果ガスの削減だけでなく、削減地域の産業新興や雇用創出につながる効果も期待されている。

東北緑化環境保全の申谷(さるや)雄太・技術企画グループマネージャーは「東北地方の観光資源とオフセットを結びつけ、東北の環境ブランドを全国に発信し認知させたい」と強調。
さらに「東日本大震災の影響で停滞気味の東北経済を力づけたかった」とも打ち明ける。

リコーリースは、企業活動全域をカバーする温室効果ガス算定の国際基準「スコープ3」の行方をにらみ、オフセットを通じて、環境経営の経験を蓄積したいとの思惑も持つ。

環境省の調査によれば、国内のカーボン・オフセット事例件数を会議・イベント型でみると7月時点で累計が230件超(推定)に達した。
会議・イベント型カーボン・ニュートラルを認証し普及を促す政府の動きも進む方向にあり、コンサートやスポーツ大会など多彩な舞台を対象にしたオフセットが誕生しそうだ。
とはいえ、国民的な認知度は低いのが実情だ。

ただ、海外環境協力センターの佐々木和嘉主席研究員は「総発電に占める原子力発電の比率が下がると、再生可能エネルギーが普及しない限り温室効果ガスが増え、より一層の温暖化対策が迫られる」と指摘。
その上で「消費者への環境面の宣伝効果が高い会議・イベント型オフセットなどのニーズは今後高まるだろう」と分析している。
【臼井慎太郎】

SankeiBizより

投稿者 trim : 2012年10月01日 11:11