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2012年12月03日

銅線泥棒

イタリアで電車の銅線に代表される銅製ケーブルの盗難が多発している。

それにより電車の遅延や通信業社の不通などが発生し、市民の生活に支障を来している状況だ。

最近起きた盗難では400kgのケーブルが奪われた。
なぜ銅線なのか?
そして盗まれた銅線はどこへ向うのか?

11月19日の朝、ローマの接続駅で大量の銅線が盗難され、鉄道の運行がストップした。
RFI(イタリア鉄道網:旧イタリア国鉄)によると、ローマ・フィウミチーノとの接続線が運休して、チヴィタヴェッキア-ローマ間では遅延が発生した。

軍警察は、銅線のケーブル400kgをもっていたローマ在住の24歳と74歳の2人を逮捕した。
これは、イタリアで珍しい事例ではない。銅線の盗難は、昨今増加している犯罪なのだ。

この類いの盗難は、わずか数年間で憂慮すべき規模に達し、企業とインフラを直撃している。
2008年に初めて問題が表面化し、10年に銅が急激に価格上昇し、1年で価格が2倍になり、問題が再燃した。
2011年にはさらに12%増加して、2012年もこれまでの水準を上回る状況が続いている。

銅はあらゆる意味で、犯罪組織が欲しがる宝物だ。銀に次ぐ電気や熱の最高の導体と考えられているだけでなく、腐敗に強く頑丈で柔軟性があり、性質を損なうことなく100%リサイクルすることができる。
磁性がなく、簡単に加工でき扱いやすい。
さらに抗菌性があって、表面でのバクテリアの増殖を防ぐ。
ガスを通さず、簡単に曲げることができる。
そして太陽光に晒されても劣化しない。

輸出できる地域は、ヨーロッパの東側(特にポーランド、ドイツ、オーストリア、ハンガリー)から、中国やインドまで非常に広い。
この市場のネットワークは広く、よく組織されている。
末端の泥棒たちが銅を盗み、その後kgあたり最大5ユーロでくず鉄業者や仲介業者に売る。
それから鋳物工場に送られるか、その 場で加工される。

身元のわからない地金になったら、銅は外国に輸出される。
そして転売され、さまざまな再生サイクルに乗せられる。
金属は加工され形を変えて、最新のTVゲームや携帯電話、世界中の太陽光発電施設のケーブルなどに再利用される。
それだけでなく輸出された銅は、再び故国に戻ってきて、さまざまな製品の内部の部品となって再び売られている可能性もある。

銅は非合法市場では、kgあたり4~10ユーロの値をつけられている。
それらは土木建築や交通、電気機械、水道・給湯設備、蛇口、船舶の部品、建築、貨幣、工芸、装飾品などに用いられる。

いちばん需要があるのは、イタリアの鉄道で見つかる銅である。
これは、質的により純度が高いためだ。
しかし盗難は、ほかの企業にも容赦なく打撃を与えた。
まずテレコム・イタリアは、数カ月前に所轄の司法機関に詳細に告発した。

この企業にとって、問題がより切迫しているのはカンパーニャ州である。
数多くの襲撃によって、13,400mのケーブルが切断された。
このためテレコム・イタリアは損害を受けた地域において、銅のケーブルをアルミの特殊なケーブルに差し替えることを決定した。
さらにある区間では、専用の警報システムを稼働させようとしている。
不法にケーブルに触れる者がいれば、自動で近くの警察の分署に警報を送る。

ENEL(元国営の電力会社)も被害者となっている。
銅線の送電網は全長100万kmに達し、イタリアの85%の地域をカヴァーしている。
そのため、しばしば盗難によって企業は出力を中断することを強いられ、市民に損害が出ている。

しかしながらイタリアでは、このような犯罪活動の増加に対して、警察側の対応が強化されていることも判明した。
事実、露見した事例は78%増加しており、 告発され逮捕された者は90%も増加している。そのうち多くはイタリア人で、ルーマニア人が続いていて、両者で85%を占めている。

この種の犯罪の予防と対応を強化するために、2012年2月に内務省、税関、イタリア国鉄、ENEL、テレコム・イタリア、ANIE(イタリア電子・電気工業連盟)によって、国立銅窃盗監視センターを設立する合意文書への署名がなされた。

WIRED.jpより

投稿者 trim : 2012年12月03日 13:41