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2013年03月04日

「温泉発電」が活発化

温泉地の地熱エネルギーを活用して発電する「温泉発電」の動きが活発化してきた。

環境省の受託を受けて新潟県で実証試験設備を運営してきた地熱技術開発(東京都中央区)が試験の成果を近く取りまとめ、出版社「国書刊行会」グループは9月に北海道で発電事業を本格化させる。

二酸化炭素(CO2)排出量の抑 制と地域経済活性化を両立できることから、各地から熱い視線を集めそうだ。


新潟県十日町市の山間にひっそりとたたずむ松之山温泉。
そこに、白い湯気を出す幅3.2メートル、高さ5.5メートルの設備がある。
温泉熱で発電する装置だ。
環境省は2010年度から3年計画で、温泉発電システムの開発・実証事業を推進。
その事業を受託した地熱技術開発がバイナリー発電設備を2011年12月に完成。
産業技術総合研究所や弘前大学などの協力を得て運転し、性能評価や課題抽出に取り組んできた。

発電に生かす源泉の所有者は十日町市。
地下約1,300メートルからわき出る97度の温泉水を熱源にしている。
この温泉水を熱交換器に入れて、水より沸点が低いアンモニア水を沸騰させて、その蒸気でタービン発電機を回して発電する。
水と低沸点媒体を利用することから「バイナリー(2つの)発電」と呼ばれている。

発電設備の最大出力は87キロワット。
年間発電量は、一般家庭100世帯分程度の電力需要を賄える規模という。
100度以下の温泉水を利用した小型発電設備の有効性を実証するのは国内初で、3月末にも成果を取りまとめる。
再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を利用して東北電力に売電することも想定、電力系統に連結する展開でも先行した。

一方、国書刊行会グループのセイユウ(東京都板橋区)も、北海道弟子屈(てしかが)町の温泉からわき出る97度の温泉水を活用するバイナリー発電設備の建設に4月に着手する。
発電設備は、環境ベンチャーのゼネシス(東京都中央区)が開発した。
9月の操業をめざす。

経済産業省は2月、道内初となる固定価格買い取り制度の対象設備として認定。
これに伴い北海道電力に1キロワット時当たり42円で販売できるが、狙いは電力供給だけではない。
発電で使用した後の温水を、野菜を栽培するビニールハウスの暖房に活用することを計画中だ。
セイユウの佐藤象三郎社長は「発電した電力でEV(電気自動車)レンタカーを走らせ観光客の足にするなど、環境保全と地域振興を両立する可能性を探り、地元に協力したい」と話す。

地熱技術開発も、発電時にCO2を排出しない温泉発電の集客効果に注目。
1年を通して安定した電気を供給できる温泉発電を「ベース電源」と位置づけて、発電量が天候に左右される太陽光や風力などと組み合わせ全体を制御するマイクログリッド(小規模電力供給網)の可能性にも目を向ける。

温泉発電なら、小さな設備であっても同じ大きさの太陽光発電の5~7倍の電気を生み出せる。
出力50キロワットの温泉発電設備から発生する1年間の累計電力量は250キロ~350キロワットの太陽光発電設備に匹敵する。

とはいえ普及に向けた課題も多い。
毒性のあるアンモニア水などの低沸点媒体を使う場合、電気事業法の保安規制に基づき主任技術者を選任し発電設備に駐在させる必要がある。
これがランニングコストの上昇要因となる上、配管敷設や冷却塔設置といった周辺工事も初期建設費を押し上げる。

地熱技術開発の大里和己取締役営業・事業開発部長は「長期的な実証試験で信頼性と安全性を証明し、規制緩和につなげたい」と意気込む。
環境省の支援による実証試験は3月末に終了するが、実証試験の継続に向けた方策を探りたい考えだ。

国内の多くの温泉地では、浴
未利用資源の有効利用と地域活性化を両立する救世主として再評価する機運が高まりそうだ。
【臼井慎太郎】

SankeiBizより

投稿者 trim : 2013年03月04日 10:46