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2014年03月17日

帝人の循環型リサイクルシステム

帝人が推進するポリエステルの循環型リサイクルシステム「エコサークル」が本格展開を始めて12年目を迎え、参画企業は海外を含め155社に拡大した。

こうしたパートナーと共同で再生可能商品を開発・販売、使用後に回収し再びポリエステル製品として利用する取り組みで、環境教育のツールとしても活用されるなど自治体の参画も目立ち始めた。

ポリエステルの再利用はペットボトルに代表されるように、回収後に粉砕して溶かし、糸状に戻す方法が一般的だった。
ただ混在した不純物などを取り除くことはできず、再生したポリエステルの糸は品質が劣化、切れやすい短繊維状のものしかできなかった。

このため「再生ポリエステルの品質は悪いというイメージ が広まってしまった」と宮武龍太郎繊維素材統括部長は唇をかみしめる。

この難題に帝人は40年以上前から取り組んできた。
そして2002年、化学技術により再利用する画期的方法を確立した。
ポリエステルを化学技術で分子レベルまで分解し、原料のジメチルテレフタレート(DMT)にまで戻すという世界初の技術だった。
ポリエステル以外に綿などが含まれていても分離し原料まで戻す。
このため品質劣化がなく、何度でも再利用することを可能にした。

再生ポリエステルはゴミとして燃やすことも不要だ
同社によると、石油からポリエステルの原料を作って廃棄する場合に比べ、エネルギー消費量と二酸化炭素(CO2)排出量を約80%削減できるという。

エコサークルは、企業の環境意識の高まりを追い風に賛同企業を増やしていった。
2005年には米アウトドアアパレル「パタゴニア」が加わると、エコバッグや病院用カーテンなど国内外で多様な分野に拡大していった。

しかし2008年のリーマン・ショックで風向きが一変。
「再生したポリエステル原料は、石油から作ったものより価格が15~20%高い。環境よりもコスト削減意識という機運が高まり、エコサークルは敬遠されがちになった」と宮武部長は振り返る。
中国などが安価なポリエステル原料の増産に動き出したことも追い打ちとなり、賛同企業数は伸び悩んだ。

それでもエコサークルによる“環境への貢献度”の大きさを地道に企業や団体に説明。
景気回復の兆しが見られた2013年度は国内外から問い合わせがかなり増えている。

「省エネ・環境保全」を戦略的新興産業の一つに位置づける中国でも動きがあった。
国内外で回収した衣類などはすべて、松山工場(松山市)で糸や生地に再 生していたが、2014年度には中国でリサイクル設備を建設し現地でのエコサークルを推進していく計画だ。
宮武部長は「ポリエステルの消費量が多い中国で軌道 に乗れば、環境貢献度は日本の比ではない」と期待する。

エコサークルへの参画は、自治体にも広がる。
2008年に旭化成せんいと共同で始めた学校体操服のリサイクルプロジェクトは、不要となった小中学校の体操服を回収してポリエステル繊維に再生する取り組みだ。

同プロジェクトに京都市が賛同。
2010年に環境教育の一環として市内小学校で導入した。
リサイクル原料を使った体操服の方が価格は高いが、問い合わせは増 え続けており、昨年4月時点で市内52の小中学校が実施。
現在は関西地区しか参画していないが、宮武部長は「将来的には全国規模、さらには高校にも広げていきたい」と夢を語る。
【西村利也】

SankeiBizより

投稿者 trim : 2014年03月17日 10:48