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2008年05月15日

「食のごみ」リサイクル不足 地産地消で自給率アップ

生ごみなど食品廃棄物は、飼料や堆肥(たいひ)にすれば資源としての価値は高い。

ところが、国内では廃棄物を資源として活用する仕組みが整っているとはいえない。
理由の一つには、食料自給率が低いため、輸入食品から出る大量の廃棄物を循環させるのに十分な家畜や田畑が国内にないという実態がある。

「食のごみ」を再生利用するためには、こうした堆肥などを使う有機農法が広がり、そこから取れた農産物をもっと多くの人が食べるようになることが求められている。

長野県佐久市の臼田地区や同県飯田市の中心市街地では、家庭から出る生ごみを集め、家畜の糞(ふん)尿などと合わせて堆肥を作っている。
飯田市の場合、3,000世帯から出る生ごみと牛糞などからできる堆肥は年間約2,000㌧。
主に地元の農家や住民に販売、農作物や家庭菜園の肥料として使われている。

全国的には、食品廃棄物は一般廃棄物の3割を占める。
飯田市などのように「資源」として活用している自治体はまだ少なく、多くの自治体では一般ごみと一緒に燃やしている。
資源として活用することで、ごみ削減につなげたいと考える自治体は多いものの、生ごみを収集するのに手間がかかることや、再生させた堆肥を農地に還元する仕組みがないなど、取り組みは遅れている。

食品リサイクル法では、食品関連事業者に食品廃棄物の再生利用や減量を義務づけているが、肥料などへの再生利用の実施率は平成18年度で46%。
実施率を上げるだけでなく、堆肥をどのように農家に戻していくかが課題となっている。

茨城大学農学部の中島紀一教授は「食べ残しなどの生ごみだけでなく、人間や家畜の糞尿も含めて『食のごみ』とすると、食料の約6割を輸入している日本にとどまる食のごみは、圧倒的に過剰で、いわば糞詰まりの状態」と指摘する。

そもそも食料自給率が79%だった昭和35年には、現在のような問題はなかった。
当時は、国内でできたものを食べ、そこから出た生ごみを飼料や堆肥として用いる循環システムがうまく働いていたためだ。

それが、農家の高齢化や化学肥料の使用などで、昭和40年に10㌃当たり約507㌔だった稲作での堆肥の使用量は、平成9年には約125㌔と4分の1に減少。
耕作地そのものも減り、耕作放棄地の面積は昭和50年の約10万㌶から、平成17年には約38万㌶と約4倍になっている。
食料自給率39%の今、堆肥を作っても、堆肥をまける農地が十分にないのが実情だ。

「食のごみ問題を解決するには、地産地消を原則として、地元で取れたものをおいしく食べることが大切」と話す中島教授は現在、学生らとともに、農家が耕作を放棄した農地を再生させる「うら谷津再生プロジェクト」を実践。
都心への通勤者も多い茨城県阿見町の農地を借り受け、学生のほか、地元の小学生や市民グループなどと一緒になって、コメや野菜作りを続けている。

日本の食料自給率を上げるためには、パンやパスタなどの輸入小麦製品の消費を控え、加工品を含めて国産米をたくさん食べることは有効な手立ての一つ。
また、消費者は価格の安い輸入野菜などに目を奪われがちだが、国内産の有機農産物の消費量が増えれば、有機農産物の生産意欲が高まることも期待できる。

中島教授は「食料自給率を昭和35年当時の水準に戻すべきだ」とした上で、「堆肥の利用を増やすためには、国内でできた有機農産物をもっと消費してもらい、有機農法を実践する農家を増やすことが必要」と訴えている。

産経新聞より

投稿者 trim : 2008年05月15日 14:39