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2008年12月22日

「大人の社会科見学ツアー」

クラブツーリズム(東京・新宿)が展開している工場見学などを目的にした旅行プラン「大人の社会科見学ツアー」が好調だ。

大型船の進水式や自動車の製造工程など普段見ることができない現場を体験することができ、団塊世代の男性たちの知的好奇心をくすぐっている。

発売から2年半で参加者は2万人に達した。


12月3日、神戸港に96人のツアー参加者が集まった。
お目当ては全長302㍍の大型コンテナ船「MOL MAESTRO(エムオーエル・マエストロ)」。
三菱重工神戸造船所(神戸市)で建造された大型船の船出に立ち会うことがこのツアーの目玉だ。
わずか10分の進水式に、参加者のほとんどが満足した様子だったという。

1泊2日で企画されたこのツアーは、初日は「揖保乃糸」の資料館「そうめんの里」(兵庫県たつの市)でそうめんの製法を学んだ後、川崎重工業の産業博物館「カワサキワールド」(神戸市)を訪れた。

2日目が進水式。
その後、日本酒の資料館や真珠の展示館などを見学した。
関東から出発し、料金は1人39,800円
比較的高額だったにもかかわらず、中高年男性の申し込みが殺到。
完売した。

大人の社会科見学ツアーの発売は2006年。
男性客から産業観光ツアーに対する要望があったため、商品化に乗り出した。
ちょうど名古屋でトヨタ自動車の組み立て工場を見学するツアーを催行していた。
これに目を付け、アサヒビールの名古屋工場(名古屋市)や春華堂(浜松市)のうなぎ味パイ菓子の工場などと組み合わせ、東京・大阪発の1泊2日の旅行商品に仕立てた。
これが旅行に行き尽くしていた70歳前後の男性にうけ、ヒット商品となった。

商品企画を担当する第二国内旅行センターの蒲田明グループリーダーは「男性が参加しやすい環境づくりにも気を付けた」と話す。
1人でツアーに参加する際の3,000~5,000円の追加料金を無料にして、1人で参加したいと考える男性心理に訴えた。
通常のツアー旅行の参加者は6~7割が女性が占めるが、大人の社会科見学ツアーに限っては6~7割が男性客だ。

現在は累計100コース以上を催行している。
しかし「商品開発は難しい」(蒲田リーダー)という。
工場見学に抵抗感を持つ企業も多いからだ。
機械部品など法人向け製品を作る工場などの場合、見学を受け入れても、それが直接、製品の需要増にはつながらない。
一般的な工場見学は地元の人や取引先を優先させることも多く、「正面きってお願いをしてもほとんど断わられる」(同)状態だ。

ようやく商品化にこぎつけても、常に中止となるリスクがつきまとう。
11~12月にも高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)を見学するツアーを企画したが、参加者が集まらず中止した。
蒲田リーダーは「マニアック過ぎてもだめ。バランスが難しい」と話す。

とはいえ、低迷が続く旅行業界で産業観光は数少ない成長分野だ。
今後も商品開発の手は緩めない。
地域経済の活性化につながると行政も力を入れており、地方自治体や地元の観光協会との連携が事業拡大のカギといえそうだ。


日経流通新聞より

投稿者 trim : 2008年12月22日 15:09