« 「ホワイトサンドビーチ」 | メイン | ミナト横浜で3万匹が蜜集め »

2009年01月01日

よみがえる棚田


日本の農山村の原風景といえる棚田、里山が見直されている。

郷愁を誘う景観が都市から多くの観光客を招き、収穫されるコメはブランド米として高い価値を生む。
生産性が低いというかつての弱みは、今では過疎地を元気づける大きな力になっている。

佐賀県唐津市にある「蕨野(わらびの)の棚田」が2008年7月、棚田単体として全国で初めて国の重要文化的景観に選ばれた。


山の北斜面に階段状に広がる約700枚の棚田は、専門の石工の指揮のもと、村人たちが江戸時代後期からこつこつと石を積み上げて造ってきた。
高さ8.5㍍という日本一の石積みもある。

ここも10年前までは、高齢化と後継者不足で耕作放棄地が徐々に増えていた。
流れが変わったのは2001年だ。

旧相知町(現唐津市)の町長、大草秀幸さん(現・佐賀県立女性センター館長)が「棚田をランドマークにして町を活性化しよう」とハイキングなどのイベントを開始。
さらに新品種「夢しずく」の栽培を始め、棚田米のブランド化に乗り出した。

一枚一枚の田は狭く、生産効率は悪い。
菜の花を田にすき込むことで化学肥料と農薬を5割以上減らして県の特別栽培農産物の認証を受け、プレミアム化に成功した。
価格は5㌔3,150円と高いが、収穫する50㌧前後の棚田米は翌年の夏までには完売する。

かつて閑散としていた里山に今では年間2万人以上の観光客が訪れる。
蕨野棚田保存会の百武兵衛会長は「集落が活気づき、みんな張り切っている」と目を輝かせる。


新潟県の十日町市と津南町にまたがる越後妻有(つまり)と呼ばれる地域は里山と棚田が芸術の舞台になっている。

この地で2000年夏から3年ごとに開いてきた「大地の芸術祭」の160もの作品が田園風景に溶け込み、訪れる人々の心を癒やす。
回を重ねるごとに人気を呼び、2006年の第3回の芸術祭は第1回の2倍以上の34万人が訪れた。

人気は2008年1~3月の冬版の「芸術祭」の開催に発展。
里山とアートの融合は、雪に閉ざされる妻有の冬を変えようとしている。


日本経済新聞より

投稿者 trim : 2009年01月01日 16:50