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2009年10月28日

十三湖シジミ

青森県を代表する特産物「十三湖シジミ」を捕っている二つの漁協間で、出荷額に格差が生じている。

漁協は、トレーサビリティー(履歴管理)制度などを導入して消費者に食の安全を訴えている十三漁協と、販売は仲買人に任せている車力漁協で、生産者情報を公開してブランド力を高めている十三漁協のシジミが高値で取引されている。

一方、従来型の取引を続ける車力漁協は売り上げ高が頭打ちの状態で、「安心」を買う消費者のニーズが、同じ産品を扱う漁協間の明暗を分けている。


十三湖は岩木川河口で日本海の海水と混じり合う汽水湖。
栄養が豊富なため大きくて味のいいシジミが捕れ、古くから全国で知られている。

十三漁協は湖の北で主にシジミ漁をし、車力漁協は湖南でのシジミ漁に加えて日本海での漁業もしている。
両漁協はシジミの乱獲を防いで漁獲量を増やすため、1990年代初めから漁獲量の上限や漁具の目の大きさを定めるなどし、共存できるルール作りを進めてきた。

転機は2002年の産地偽装事件。
仲買人を通じて他県に出荷したシジミに小川原湖産が混ぜられ、「十三湖産」として販売されていた。
十三湖産の漁獲量が少なかったのが理由だった。

十三湖のシジミはそれまで、両漁協とも漁師と仲買人が直接、売買する相対(あいたい)取引をしていた。

しかし、十三漁協は事件を機にシジミをいったん漁協に集めて入札する「共販」方式に変え、なるべく漁協が漁獲量や水揚げ額を把握するよう大転換した。
十三漁協はさらに、「安全・安心」という新たな魅力を加えてブランド力を高めるため、2005年にトレーサビリティー制度を導入。
漁師の名前や入札日などの生産者情報をQRコードに入れて出荷するようにした。

今年5月は、漁業資源と生態系の保護に積極的な漁業者団体に与えられる社団法人「大日本水産会」(東京都)の認証「マリンエコラベル」を県内で初めて取得。
生産者情報とともにシジミに表示し、通信販売の広告に載せるなどして消費者にアピールしている。

一方、車力漁協は、会員の漁師と仲買人とのつながりがそれぞれ深いうえ、市場販売は仲買人に任せていることもあり、漁協全体で付加価値を付ける取り組みはしていないという。

個別に行うこの相対取引は、漁師と仲買人の力関係が出荷価格にはっきりと表れるといい、車力漁協の組合員からは「出荷価格は十三漁協の3分の2ほどにしかならない」と嘆く声も聞かれる。
しかし仲買人の影響力は強く、共販に切り替えられないのが現状だという。【三股智子】


毎日新聞より

投稿者 trim : 2009年10月28日 16:25