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2009年11月04日

棚田保全に都市住民が協力

農村の高齢化などで荒廃が懸念される棚田の保全に、農作業体験などを通じて都市住民や企業が協力する取り組みが活発だ。

水がきれいでおいしい米が育つ田で、多様な生き物など自然と触れ合う貴重な機会になっている。

食の安全や環境への関心の高まりが農村活性化に一役買っている。

谷あいに階段のように重なる棚田をコオロギやカエルが跳ねるたび、親子の歓声が響く。
栃木県茂木町の「岩ノ作(いわのさく)棚田」で10月初旬、首都圏の住民らでつくる特定非営利活動法人「棚田ネットワーク」が主催した稲刈り体験ツアー。
3歳の長男と参加した茨城県つくば市の主婦は「ご飯がどうやってできるのか知ってほしい」と話した。


「希少種のトンボやドジョウもいる。都会の人のおかげで棚田の素晴らしさに気付いた」と笑顔を見せるのは地元農家の小林章市さん(59)。
棚田は生産効率が悪く、減反やコメ価格低迷、後継者不足で約5年前までは2㌶のうち4分の3が放置され木が茂っていた。

地元の集落は荒廃を食い止めようと、耕作放棄防止活動を支援する国の中山間地域直接支払制度を活用するとともに、都市住民の自然観察や農作業体験の受け入れを始めた。
農村の原風景に魅せられて茂木町を訪れる人々は年々増加し、栽培面積も1㌶まで回復。
ネットワークの会員らが体験田の米を年間100㌔買い取ることも決まった。


楽しみながら棚田を守ろうという取り組みは各地に広がっている。
農作業の手伝いに行くだけでなく、棚田の“オーナー”として会費を支払い、収穫を受け取る「棚田オーナー制度」は1992年に高知県檮原町で始まって以来、全国約80カ所で実施。
協力自治体などが集まる「棚田サミット」も今年で15回目だ。


棚田保全を社会貢献と位置付け、応援する企業も少なくない。
製薬会社アストラゼネカ(大阪市)は2006年から毎年、社員約3,000人が棚田など中山間地域(2009年は55カ所)で稲刈りなどのボランティアに参加。
都市の企業や団体と農村の提携を促進、農地復旧などに取り組む静岡県の「一社一村運動」でも、4地区で棚田保全事業が進行中だ。

2005年の農林業センサスによると全国の棚田の総面積は14万㌶。
棚田学会の安井一臣理事は「農家が米を作らないと景色も水源も守れない。大規模農家とは違う助成が必要だが、都市に住む棚田の『応援団』の増加は後押しになる」と一連の動きを歓迎している。


フジサンケイ ビジネスアイより

投稿者 trim : 2009年11月04日 10:24