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2010年01月11日

揺れ動く「善意」のプルタブ回収

プルタブ(缶のふた)を回収し、車いすに交換するという善意の活動が揺れている。

缶飲料はかつて、ふたを開けるとタブが本体と離れるタイプが多く、タブ回収は環境と福祉の両面に優しい取り組みとして全国に広がった。

しかし、ふたを開けてもタブが本体から外れない缶が主流となったことで、回収業界には「無理に切り離すとけがにつながる」「タブだけ持ち込まれても処理が困る」として、引き取りを拒否する動きも出ている。

ただ、回収運動を行っている学校や団体は今でも少なくなく、困惑が広がっている。


「タブを集めて車いすに」という取り組みは、かつて人気歌手のラジオ番組を通じて広く知られるようになったという。
タブを業者に買い取ってもらい、代金で車いすを購入するという仕組みだ。

当時は、本体からタブが切り離される缶が多く、道端などに散乱したタブが環境美化の観点から問題視されていた。
「車いすとの交換」は、環境と福祉が結びつき、手軽にできる活動として全国に拡大した。

その後缶は改良され、近年ではタブが外れない固定タイプが主流となったが、大阪府理容生活衛生同業組合では、今でも多いときは週に400㌔のタブが集まるという。
特定業者に引き取りを依頼し、過去7年間で車いす321台を福祉団体などに寄贈している。


組合によると、缶そのものの回収は保管場所やにおいなどの衛生管理がネックとなり、タブだけの方が集めやすいという。
組合は「小学校や老人会など大勢の方が福祉のために集めてくださっている。街の中にボランティアが根付いている証拠」としている。

これに対し、回収業者など34社でつくる「アルミ缶リサイクル協会」では、現在では缶からわざわざタブを外す際に指を傷付ける危険性があるとして、缶ごと回収することを呼びかける一方、タブのみの回収は拒否する姿勢をみせている。

協会は、アルミとして重量で売買されることから「缶の回収の方がタブだけよりも40倍の価値がある」と説明。
車いすと交換するには、タブだけだとドラム缶1本分ぐらいが必要になるという。

協会では昨年12月末、「リサイクルはタブをつけたままで」という広報をホームページにアップ
同様のちらしで2年前から啓発しているが、安倉教隆専務理事は「タブ回収運動は根強く、なかなか理解してもらえず困っている」と話す。

大手飲料メーカーも「タブを切り離すことは想定されていないし推奨しない」と強調。
愛知県の回収業者は「善意でやっている方には申し訳ないが、タブは小さすぎて処理装置にかけにくく、別の工程が必要になる」と話す。

こうした動きについて、関西福祉大学の平松正臣教授(社会福祉)は「タブを集めるだけでなく、その後車いすになるまでの過程を理解する必要がある。善意を無駄にしないため、タブの回収が全体の中でどの位置にあるのかを知ることが本当の福祉につながる」と指摘している。


産経新聞より

投稿者 trim : 2010年01月11日 11:23