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2010年02月13日

バンクーバー五輪、肥大化

バンクーバー五輪は「環境」を主要テーマに掲げ、12日(日本時間13日)に開幕する。

だが4年に1度の雪と氷の祭典は、地球温暖化の影響にあえぎ、省エネ大会という目標に逆行するかのように肥大化の一途をたどる。

今回で21回目を迎える冬季五輪は、大きな曲がり角を迎えている。


山肌にそこだけ張り付けたように雪の斜面が伸びる。
フリースタイルスキー・モーグルなどの会場となるバンクーバー市近郊のサイプレスマウンテンだ。
開幕を控え、人工的に造られたコースで練習に励む選手たち。
その上空を、ヘリコプターが飛び、大型ダンプカーが行き交う。
記録的な暖冬の影響で、不足する雪を運んでいるのだ。

「環境に配慮した五輪」―。
バンクーバー大会が掲げる主要テーマからみれば、皮肉とも言える光景は、曲がり角に立つ冬季五輪の現状を象徴している。
五輪に限らず、今季も雪不足などで国際大会が数試合、中止された。
地球温暖化の影響は、冬季競技に襲いかかっている。
一方で、競技のため、集まってくる人々のための施設づくりは環境への影響が避けられない。
とりわけ冬季競技は自然の中に入り込んでいく。

振り返れば、この対立する構図を緩和しようと初めて臨んだのが1994年のリレハンメル大会だった。
自然との共生をテーマに掲げた大会。
以来、環境は五輪の大きな柱となり、今大会にも受け継がれている。

さらにリレハンメルは、それまで同一年に開催されていた夏と冬の五輪が初めて分かれて実施された大会にもなった。
夏と冬の分離で冬の注目度は上昇。
スポンサーメリットが生まれ、五輪マーケティングに活用された。
ただ肥大化という副作用も内包されていた。

リレハンメルの6競技61種目から、バンクーバーは7競技、史上最多の86種目に増大。
参加国・地域も67から82になった。
そして肥大化した大会に見合うように開催都市も膨らむ。
リレハンメルは人口約2万3千人(当時)の北欧の谷あいの町だった。
それが1998年の長野で約38万人、前回開催都市のトリノは人口約90万人、バンクーバーは約58万人で、周辺都市を含めれば約213万人にものぼる。
東京が立候補した2016年夏季五輪招致活動の際にも「もはや大都市でしか五輪は開催できない」との声が聞かれたが、冬もまた同じ傾向にあるようにみえる。

冬季五輪が見舞われている雪不足について、国際オリンピック委員会(IOC)のジャック・ロゲ会長は「すでに開催地決定に際しては気候、雪の状態のデータ提出を求めている」と語り、開催地選定に影響があるとの見解を示した。
だが、根本的な解決策は見えない。
分岐点となった大会から16年。
バンクーバーでは次へとつながるメッセージが見いだせるだろうか―。【バンクーバー 金子昌世】


産経新聞より

投稿者 trim : 2010年02月13日 16:45