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2010年03月25日

無駄なファイルを減らして


オフィスのエコを実現する際に、真っ先に思い浮かぶのがペーパーレス化だろう。

業務で必要な紙の書類をなるべく無くし、電子ファイルの形で扱うようにする。

それにより、紙を作る際に発生するCO2や、印刷機器を動かす際に発生するCO2などを削減するというものだ。


紙の書類を電子文書化するのに便利なのがドキュメントツールである。
例えば富士ゼロックスのDocuWorksのように、文書を紙に印刷する替わりにデスクトップ上に文書を印刷するイメージで、電子的な文書として利用するツールだ。
紙の文書とまったく同じ使い勝手とまではいかないが、デスクトップ上の電子文書は紙に近い感覚で扱うことができる。

重要な部分に線を引いたり、メモ書きでコメントを追加したりといった紙ならではの便利さを電子的に実現している。
さまざまな種類の付せんを張ることもでき、Aの文書とBの文書をまとめて1つの文書にし、電子的なバインダーで綴じることもできる。
自分で手を加えた文書は、ツールを利用するほかのユーザーに渡して同じように閲覧や加工が可能だ。
その際には、パスワードセキュリティによって保護したり、電子印鑑や電子証明書による電子署名機能を追加したりすることもできる。

紙には可読性の高さや、誰にでも扱える簡便性、PCやその他のデバイスがなくてもどこでも参照できるといったメリットがある。
電子文書には、アクセスコントロールやセキュリティ対策など、紙では実現できないさまざまなメリットがある。
紙の利便性と電子文書の利便性の双方を併せ持つような環境をオフィスに導入できれば、仕事の効率は確実に向上するだろう。
効率化した上でペーパーレスによるCO2排出量の削減ができれば一石二鳥となる。


しかし、既存の紙文書を電子文書へ単純に置き換えてエコを実現しようというのは、あまり効率的とはいえない。

文書の形態を置き換えるだけでは文書の数は減らず、むしろ電子文書の手軽さから多くの複製が生まれ、文書量が増大してしまうからだ。
そうなれば、多数の電子文書を管理するために大規模なファイルサーバが必要になり、コンテンツ管理システムなども導入しなければならないだろう。
大規模システムを導入するとなれば、その運用のために余分なエネルギーが必要になり、結果としてCO2排出量を増やしかねないのだ。

A4用紙1枚を生産する際に発生するCO2量は、さまざまな試算があるので一概にはいえないが、3~5グラム程度といわれる。
流通や紙のリサイクルなども考慮すると、さらにCO2排出量が増えることになるが、紙の状態であれば印刷後はCO2をそれ以上には排出しない。
しかし、電子文書をシステムで利用していくと、運用し続けている間はずっとCO2を排出し続ける。


紙を減らしてCO2を削減しようと考える前に、まず社内業務のプロセスを簡素化する。
その結果として紙が減るというアプローチが重要だ。

無駄なプロセスの多くには紙の文書が介在していることが多い。
無駄な紙ではなく、無駄なプロセスを減らすことで、おのずと紙も減るはずである。

電子文書は、物理的な場所を必要としないので、どんどんとため込んでしまう傾向がある。
電子文書を作成後、二度と参照しないようなファイルがHDDに存在してはいないだろうか。
紙であれば、物理的な場所が必要なので定期的に見直しを行い、古い文書は適宜倉庫へ移動したり、保管期間を過ぎれば破棄したりする。
しかし、電子文書ではなかなかこのような整理は行われない。
むしろ、簡単に複製できるのであちらこちらに同じ内容のファイルが散在することになり、多くのストレージが無駄に使われてしまう。

こうした状態は内部統制の観点からも問題である。
本来複製されるべきではないファイルが管理されないまま複数存在していたり、それらが誰でもアクセスできるような場所に置かれていたりしたままになりがちだ。

この問題を解決するために全文検索の機能を使い、さまざまなファイルへ瞬時にアクセスできるようにしているところもある。
これは本来、検索で容易に目的の情報へアクセスできるようにして、情報の再利用性を高め業務を効率化することが目的だ。
しかし、社内に蓄積された無駄な電子文書を探し出すことにも利用される。
ファイルサーバなどを対象にして検索し、重複しているファイルや、セキュリティ上問題の場所にあるファイルを探し出すというものだ。

オフィスのエコを目指すには、紙を減らすこと考える前に全文検索の仕組みで企業が大量に抱えている電子文書を整理し、適切にスリム化すべきである。
実際に、このような取り組みでストレージの増設計画を見直すことができ、コスト削減と省エネを実現できた例もある。


オフィスの紙を減らすだけならば、より簡単な方法もある。

紙を印刷する際には必ず両面印刷する。

これならオフィスで必要な紙の量を大幅に削減できる。
実際にこの方法を取り入れて紙の量を大幅に減らした企業や、すべての会議室にプロジェクターを設置しておき、会議の際に紙の資料を印刷して配らないように徹底した企業もある。
これらは極めて簡単なことだが、さほど手間をかけずに確実に紙を減らせるエコな方法である。
身の周りでできることは積極的に行動に移していくべきだろう。


4月から東京都では条例の改正によって、原油換算で年間1,500㌔㍑以上の燃料、熱および電気を使用する大規模事業所では、温室効果ガス排出の総量削減義務が始まる。
事業所ごとに2002~2007年度までの間のいずれかで連続する3カ年度分の平均排出量から基準排出量を設定し、基本的にその8%の温暖化ガス排出量を削減していかなければならない。
これは総量削減なので、紙を減らしたが、そのほかから出る温室効果ガスが増えてしまったということが許されないのだ。
義務であるため、企業として「環境対策に積極的に取り組んでいます」といった意志や姿勢を示しているだけでもいけない。

この排出削減義務に対しては、主に省エネ型の機器や空調設備を導入したり、物流で利用する化石燃料を減らしたりするなど、利用するエネルギー量そのものを減らすことで達成することになるだろう。
しかし、個人レベルでもなるべくエネルギーを使わないようにすることが重要であり、最終的に企業の温暖化ガス排出量の総量削減にも貢献する。
個人レベルで無駄な情報を持たず、むやみに電子文書などの複製を行わないようにする。
これを大勢の社員で取り組めば、確実に総量削減に寄与するはずだ。

オフィスのエコに取り組むためには、まずは手元のPCのHDDに無駄なファイルがないかを確認し、それを削減することから初めてみるのが良いだろう。【谷川耕一】


ITmedia エンタープライズより

投稿者 trim : 2010年03月25日 11:14