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2012年03月05日

「廃プラ利用のアンモニア」

昭和電工が製造している、使用済みプラスチックを原料の一部に用いたアンモニア「ECOANN(エコアン)」が脚光を浴びている。

製造過程で排出される副生物の大半が再利用できる上、従来の方法に比べて製造時の二酸化炭素(CO2)排出量も削減できる。

アンモニアには石炭や石油火力発電所で生じる窒素酸化物(NOX)を除去する役割もあり、東京電力福島第1原子力発電所事故以降、原発の運転停止で火力発電の比率が高まる中、この“環境配慮型素材”の発電所向け出荷が伸びているという。

基礎化学品であるアンモニアは、肥料やアクリル繊維の原料となるほか、石炭や重油などの燃焼時に発生するNOXを窒素と水蒸気に分解する還元剤や、工場から出る酸性の廃液を中和する薬剤としても利用されるなど、用途は多岐にわたる。

同社はアンモニア外販メーカーとしては国内最大手。
製品名のエコアンは「エコロジーなアンモニア」という意味で、化学品事業部門の中核拠点である川崎事業所(川崎市)で製造しており、2003年に販売を始めた。
最近の年間売上高は30億円強。
同事業所には、分子レベルまで分解して他の物質として利用する「ガス化」技術を導入した設備があり、1日当たり195トン(年間6万4,000トン)のプラスチックを処理できる。

製造方法はこうだ。
フィルムやトレー、ボトルといった家庭や企業などから出された廃プラは自治体が分別収集し、入札を経て同社が調達した上で川崎事業所に運び込まれる。
プラスチックは破砕して異物を除去した後、成型機によって圧縮されて小さな固まりに加工され、低温・高温の2つのガス化炉の中で水素とCO2の合成ガスに変わる。
さらに、アンモニア製造設備で合成ガスから水素のみを取り出し、その水素を利用してアンモニアを製造する。

残ったCO2のうち、一部は隣接する関連会社の工場でドライアイスや保冷剤の液化炭酸ガスの原料として利用。
また、合成ガスの生成過程で排出される副生物のスラグや金属類、塩、硫黄は大半が資源として有効活用される。
例えば、スラグは路盤材、塩はソーダ原料として使われる。
担当者が「ゼロエミッション型リサイクル」と胸を張るゆえんだ。

製造時の環境負荷を低減しているのも大きな特徴。
1キログラムのアンモニアを製造する際のCO2排出量は、都市ガスのみでつくる従来の方法では3.7キログラムだが、都市ガスに廃プラを加えて製造した場合は2.4キログラムで、約35%削減できる。

これら環境面への配慮にとどまらず、肝心の品質や性能でも通常のアンモニアに見劣りしない。
エコアンの主な販売先は国内の火力発電所で、「電力会社は『グリーン調達』を意識しており、エコアンのニーズは高い」(担当者)。
実際、福島原発事故を受けて全国各地の原発が停止している中で、「足元では火力発電所向けの出荷が伸びている」(同)という。

プラスチックは日常生活で最も身近な素材といえるが、主な原料である石油は有限の資源。
不要となった後にアンモニアとして生まれ変われば石油資源の節約にもつながる。

エコアンの本格的な事業拡大には、原料となる廃プラの安定調達という課題もあるが、廃棄物の削減や循環型社会づくりという観点からも期待は大きい。
【森田晶宏】

フジサンケイ ビジネスアイより

投稿者 trim : 2012年03月05日 16:12