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2012年06月25日

大学の「ボランティア授業」


例年より2ヵ月遅れの昨年12月1日に始まった、2013年大卒予定者の就活戦線。

今まさに内定のピークを迎えているが、この7ヶ月間の就活で、自分自身の「社会経験不足」を実感した学生も多いのでは?

自己PRを考えてもサークル活動やアルバイトしか出てこなかったり、面接では年上の人とうまく会話することができなかったり。
自分の良さを出す前に玉砕してしまった人もいるはず。

大学ジャーナリストの石渡嶺司氏が「どんな業界も求めるのは『コミュニケーション能力がある学生』」と言うように、会社という“組織”に入る以上、マニュアル本に書かれた受け答えではなく、実際に社会の中で体験し、身に付けたコミュニケーション能力のある学生が求められている。



では、学生時代にどんな社会経験ができるのか?
実は最近、単に学問の習得だけでなく、社会経験を積むことで単位を与える大学も現れ始めている。
それが昨年、文部科学省が国公立大学を中心とした全国の大学89校へ通達した『ボランティアを授業の一環として認める』という要項だ。
たとえば、事前講義と30~60時間の程度のボランティア、事後のリポートを組み合わせ、1~2単位を与えるといった内容。

昨年、この活動を認定した大学は、東日本大震災で大きな被害を受けた3県にある岩手大、東北大、福島大、そして東京大学、お茶の水女子大学、筑波大学などの32校。
“尾木ママ”こと教育評論家の尾木直樹氏は、「(通達を受けた89校のうち)4割の大学が単位を認定していることは評価できる。来年度はもっと増えるのではないか」との見解を示している。


また、授業ではなくサークル活動の一環として、東京大学と明治大学の学生によって作られた団体「ユースフォー3・11」が、学生たちにボランティアを呼び掛けたところ、震災後から延べ8,000人以上が参加。
卒業旅行ならぬ「卒業ボランティア」を企画したり、ボランティア活動の写真展を開催するなど、学生らしい知恵で参加者のハードルを下げている。

もちろん、こうした学生のボランティア意識の高まりは、就活のためではない。
きっかけは、昨年の東日本大震災だ。
2011年を象徴する言葉が「絆」だったように、震災の報道を見て「自分にも何かできるのでは?」と、募金をしたり、実際に復興支援活動をした人も多いだろう。
こうしてボランティアが身近なものになった今、社会貢献や地域貢献にも目が向けられるようになってきた。

そこで大きな役割を果たしているのが、facebookなどのソーシャルネットワークだ。
同じ意識を持った人と情報が共有しやすく、気軽に参加もできる。
ネット上では各種NPO団体や自治体、学生サークルが主催するものから、企業のCSR(社会的責任)活動など、数多くのボランティア募集を見つけることができる。

例えば、トヨタが新型ハイブリッド車「AQUA」の発売にあわせて実施している「AQUA SOCIAL FES!! 2012」は、水をテーマにした自然保護活動。
海や川をキレイにしたり、水辺の自然を守ったりする活動を、今年の3月から全国50ヶ所で順次開催している。
「越前にコウノトリを呼び戻す田んぼ」(福井)、「みんなでよくする東京湾2012」(東京)、「天草の海とアカウミガメを守ろう」(熊本)など、地域色の豊かなテーマで、自然と触れ合いながら社会貢献できる一般参加型のアクションプログラム。
5月20日に行なわれた「保津川保全プロジェクト」(京都)には、定員の50名に対し、その倍の数の100人程が集まり、20代の参加者がそのうちの3割超を占めていたという。

「友人に誘われて参加したんですが、今まで知らなかった自分が住む地域の環境のことを学べたし、この経験を他の人にも伝えていけたらいいですね」(20代・男性)
「以前からボランティア活動に興味がありソーシャルネットワークで探して参加しました。最初は一人で不安でしたが、同じことに興味を持つ人たちの集まりだったので、すぐ打ち解けることができました」(20代・女性)

など、「AQUA SOCIAL FES!! 2012」の参加者の声を聞くと、気軽に参加していることがうかがえる。

初めは「就活のため」と思ってボランティアに参加するのもいいだろう。きっかけは何であれ、いろんな人と出会い、一緒に行動することで、それが社会貢献になり、自分の“経験”にもなる。そして何よりも、本当に自分のやりたいことが見えてくるかもしれない。
【石塚隆】

週プレNEWSより

投稿者 trim : 2012年06月25日 15:58