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2012年06月26日

鏡水大根

那覇市は、小禄の鏡水地域で戦前、盛んに栽培され、沖縄戦と戦後の軍用地接収で一度は生産が途絶えていた伝統野菜「鏡水大根」(カガンジデークニ)の普及促進に乗り出す。

京野菜など、地域で古くから栽培されてきた伝統野菜を見直す動きが全国的に高まる中、県都那覇の“土地の味”復活につなげたい考えだ。

鏡水大根の復活に力を注いできた農家は「鏡水大根は地域の誇り。
生産力を高め、多くの人に味わってもらえるよう頑張りたい」と意気込んでいる。

鏡水大根は戦前、字鏡水(かがみず)(今の那覇空港や自衛隊那覇基地周辺)を中心に栽培されていた。
だが沖縄戦以降、生産が断絶。
鏡水地域出身で鏡水大根の復活に取り組む新崎實(みのる)さん(72)は「沖縄戦で継続的に作れる状態ではなくなり、種の保存が途絶えた。

戦後は代々受け継いできた畑が米軍に 接収されてなくなった。
鏡水と異なる場所は土質や環境が違うため作りにくくなったのではないか」と話す。
復活の足掛かりは2006年、新崎さんら鏡水郷友会のメンバーが県農業研究センターに保存されていた種100粒を譲り受け、豊見城などで育てたことに始まる。

だが現在、栽培しているのは小禄地域の住民でも10人程度。
主流の青首大根などに比べると育成に手間がかかり、栽培技術の継承が途絶えていたこともあり、栽培は試行錯誤が続く。

生産が限られるため市場には流通せず、評判を聞いて農家を訪ねてきた業者への直接販売や、近隣住民に提供しているのが現状だ。

那覇市が計画した新たな事業はJAおきなわ小禄支店を通じて新崎さんら農家に生産を委託する。
沖縄振興一括交付金を使い、県産野菜の地産地消を促す取り組みを含め124万円の予算を計上した。
20アール(2千平方メートル、約606坪)の農地で栽培し、3千キロの収穫を目標に掲げる。
量販店や市場での販売も目指す。
栽培記録を残し、栽培技術の継承にもつなげたい考えだ。

市商工農水課は「那覇の伝統野菜をアピールし、地産地消につなげたい」と狙いを語る。
事業を担うJAおきなわ小禄支店の担当者は「行政が伝統野菜に力を入れる珍しい取り組み。栽培方法も昔のものを掘り起こしながら、長期的視点で取り組みたい」と意気込む。

新崎さんは市の事業として支援が決まったことに「栽培する価値が認められ、うれしい。戦前に育てていた先祖も喜んでいると思う」と笑顔を見せた。
【知念征尚】

<用語>鏡水大根(カガンジデークニ)
ラグビーボールのような形で、長さ40センチ、太さ60センチ、重さは8キロ近くになるものもあるという。
苦味や辛味はほとんどなく、味が染みこみやすいのが特長だ。
おでんなどによく合い、旧正月には欠かせない冬野菜として県民に親しまれていたという。

琉球新報より

投稿者 trim : 2012年06月26日 11:28