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2012年07月30日

ピークシフト自販機

日本コカ・コーラは、消費電力が増える日中の冷却用電力をほぼゼロにする「ピークシフト型自動販売機」を開発した。

内部の断熱構造などを改良したことで消費電力が少ない夜間に集中冷却、日中に冷却運転を停止しても庫内温度を保てる仕組み。

現在、猛暑で知られる埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で実証実験中で、来年1月から全国展開する計画だ。

同社はこれまでも自販機の節電に取り組んできたが、今回は「減らす」から「ずらす」に発想転換したことで実現した。

開発した自販機「A011号機」は、日本コカ・コーラグループと富士電機リテイルシステムズ(三重県四日市市)の「アポロ」と名付けられた共同プロジェクトから生まれた
着手したのは昨年5月だ。

きっかけとなったのが、昨年3月の東日本大震災。
夜間も稼働、照明が点灯している自販機に対して石原慎太郎都知事が「自販機はやめろ」と発言するなど風当たりが強くなった。

日本コカ・コーラによると、自販機1台当たりの消費電力は300ワットと、エアコン(12畳対応)の860ワットより小さいが、冷蔵庫(容量500リットル)の275ワットより大きい。
一方で、企業がサマータイムや輪番操業を導入するなど、消費電力のピークタイムをずらすことへの関心が高まっていた。

そこでプロジェクトチームは、消費電力に比較的余裕がある夜間に集中冷却、日中も保冷可能な自販機をテーマに開発に着手。
庫内に使用する断熱材をこれまでのウレタンから断熱効果が約10倍に高まるという真空断熱材に変え、1台当たりの使用量を増やし、配置も工夫。
消費者が飲料を購入した際、商品が取り出し口まで移動する間の空気の漏れも構造を見直すことで最低限に抑えるなど細かいところまで気を配った。

この結果生まれたA011号機は、午前9時~午後8時を含む最長16時間、気温32度の環境下で冷却運転を停止しても5度以下の冷たい商品を提供でき、日中の消費電力を約17ワットと、従来機より約95%削減することに成功した。
夜間の午後11時~翌午前7時は集中冷却するため消費電力が約450ワットと増えるが、トータルでも消費電力量を約1割削減できる。

実証実験では熊谷、多治見両市で各6台設置、7月2日から8月末までの約2カ月間稼働状況や商品の提供温度などを調べる。
同じ仕組みを温かい飲料を販売する自販機に応用することも可能だ。

日本コカ・コーラで自販機開発担当のフランチャイズオペレーションズベンディング事業部の大谷知也統括部長によると、開発段階では技術面だけでなく、発想の転換が最大の壁となったという。
同社が1990年代から始めた自販機の節電では、庫内全体を冷却し続けていた状態から、取り出し口に近い商品のみを部分冷却するという、「部分」面積の縮小に力を入れてきた。

これに対し、庫内全体を集中冷却するという今回のコカ・コーラ側の逆転の発想に富士電機側の技術者は当初戸惑い、自販機を展開する全国のボトラー社も懸念を示した。
それでも、真空断熱材を使用する省エネ型冷蔵庫の構造などを参考にしながら試作を繰り返し、納得のいく機械に仕上げていった。

国内の飲料自販機の設置台数は253万500台(日本自動販売機工業会、2011年末)で、日本コカ・コーラはこのうち単一メーカーとして最多の約98万台を保有する。
大谷氏は「リーディングカンパニーとして節電技術もリードしていきたい」と話す。
【金谷かおり】

SankeiBizより

投稿者 trim : 2012年07月30日 14:24