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2012年07月30日

再生エネ買い取りに早くも疑問の声

7月から太陽光や風力発電など再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度がスタートしたが、早くも制度維持について疑問の声が出始めた。

買い取り価格を 高めに設定したことで、大規模太陽光発電(メガソーラー)をはじめとする発電施設の建設計画が相次ぎ、この勢いが続けば電気料金の高騰が懸念されるためだ。

普及度合いやコスト低下を勘案しながら、買い取り価格を下げるルールづくりが必要との見方も出ている。

固定価格買い取り制度は太陽光や地熱、風力、中小規模水力、バイオマス(生物資源)によって発電した電力を電力会社が買い取る制度。
1キロワット時当たりの買い取り価格と期間は、太陽光が42円で20年間、20キロワット以上の風力が23.1円で20年間、1万5,000キロワット以上の地熱が27.3円で15年間―など。
経済産業省は今年度中に原発2基分にあたる250万キロワットの再生エネ施設の認定を目指している。

ただ、買い取り費用は電気料金に上乗せされ、上乗せ額は今年度で1キロワット時0.22円と設定された。
現行の太陽光発電余剰買い取り制度の負担金も加算すると、標準家庭(月使用量300キロワット時、電気料金7,000円)の今年度の負担増は月平均87円だ。

太陽光で42円という買い取り価格は、急拡大するきっかけとなった2004年のドイツの水準とほぼ同程度。
この水準についてSMBC日興証券は「参入を目指す事業者のハードルが低くなった」と指摘する。
事業者だけでなく、金融機関も事業に対するリスクを見極めやすくなり、投融資が容易となるためだ。
実際、ソフトバンクが全国規模でメガソーラー建設に乗り出すなど大規模投資はめじろ押し。

半面、再生エネへの投資が進めば進むほど電気料金に跳ね返る仕組みになっているため、制度自体の持続可能性を疑問視する見方も強まっている。
ドイツでは 再生エネの電源構成比は2001年の6.7%から2010年には約20%に拡大したものの、一般家庭への電気料金上乗せ額は11年で月1,200円程度まで増加。
これが国民の反発を招き、今年に入って買い取り価格を20~30%も引き下げ、日本の半分程度となった。
しかも、全量買い取りの廃止も決めるなど制度変更を余儀なくされている。

大和総研の神田慶司エコノミストは日本の買い取り価格制度について、「価格を決めたが、導入ペースをコントロールするルールがない」ことを問題点に挙げる。
投資が過熱しバブルが発生しかねないことも懸念される。
実際、西班牙では買い取り価格の引き下げでバブルが崩壊。太陽光発電と投資意欲が急速にしぼんだ。

このため、神田氏は「早い段階から買い取り価格を引き下げるルールを明確にしたり、事前に設備導入量の目標値を設けて周知させるなどのシステムが必要」と指摘する。
大和総研は制度開始から10年後に再生エネの発電比率を20%に引き上げた場合の電気料金を試算し、10年目の家庭向け電気料金が月約600円上昇するとしているが、バブルが発生すればこれを上回る可能性もある。

政府が検討を進めている2030年の電源構成の選択肢では、原発の比率について「0%」「15%」「20~25%」の3つのシナリオが示されたが、再生 エネの比率は20~35%まで高めることを前提としている。
しかし、再生エネの買い取り制度が破綻すれば、いずれのシナリオも実現しない。
今後、技術革新による発電量増加や設置コストの低下なども見込まれる。
そうなれば普及度合いに加速することも予想される。
再生エネの普及は二酸化炭素(CO2)排出削減など環境対策ともなるが、欧州の反省を踏まえ、コスト低下などを買い取り価格に反映させるなど、早い段階から持続可能な仕組みに見直す必要がある。

SankeiBizより

投稿者 trim : 2012年07月30日 14:16