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2012年08月13日

「次世代グリーン基地局」

NTTドコモは、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを駆使し、携帯電話に電波を送る基地局に必要な電力を賄う「次世代グリーン基地局」の開発に乗り出した。

2013年春までに全国10カ所に同基地局を設置し、各地で実証試験を行う予定だ。

停電や災害で電力供給が途絶えた場合でも運転して通信回線を維持するほか、電力消費量や二酸化炭素(CO2)排出量の削減にもつながる環境にやさしい技術だ。

ドコモが今年3月、神奈川県横須賀市にある研究所内で実証試験を開始したグリーン基地局の試作機は、太陽光パネルとリチウムイオン蓄電池、制御装置、アンテナなどで構成される。
基地局を稼働させるのに必要な電力は約300ワット。
これに対し、基地局の屋根の上には1枚当たり200ワットの太陽光パネルが計4枚設置されており、最大800ワットの発電が可能だ。

太陽光パネルで生み出された余剰電力はリチウムイオン電池に蓄えられ、夜間の電力として利用する。
悪天候が続いたりして電力が確保できない場合は、商用電源から電力を確保する。
天候によってバラツキがあるが、基地局に必要な電力は太陽光だけで1日当たり平均50%賄えるという。

太陽光パネルで発電した電力は直流のため、交流で稼働する機器を使用すれば電流を変換しなければならない。
しかし、直流と交流を変換する際、一般的に5~10%のエネルギーロスが発生する。
こうした無駄をなくそうと、グリーン基地局では設置した全ての機器は直流で使えるものをそろえた。
試作機は太陽光 を使用しているが、発電源としては風力発電や燃料電池なども検討している。

ただ、開発の陣頭指揮をとるドコモ先進技術研究所環境技術研究グループの竹野和彦主幹研究員は、「本格的な普及に向けては高いハードルが存在する」と話す。

最大の課題がコスト。
なかでも、設備を高価にしているのがリチウムイオン電池だ。
モーターとガソリンエンジンを組み合わせたハイブリット車(HV)や電気自動車(EV)などエコカーの普及によってリチウム電池の価格は下落傾向にあるが、それでもまだまだ高価という。

ドコモの基地局は日本国内に約10万カ所あり、「現在のコストでは、全国に導入していくことは難しい」(竹野主幹研究員)。
基地局の装置類は通常、10~15年間使用するが、グリーン基地局化による消費電力の削減によって浮いたコストが、基地局の投資コストを上回らなければ実用化はおぼつかない。

それでも研究に力を注ぐのは、「不安定な商用電力や電力料金の値上げが予想されるなど電力問題が懸念されている」(竹野氏)ためだ。
原発稼働停止に伴う電力不足により、今後も不測の停電が起きれば、通信途絶という事態も想定される。

実際、同社は東日本大震災時、長時間の停電により、東北地区の基地局は完全復旧までに1カ月以上もの時間を要したという苦い経験を持つ。
それに対応するためにも、災害に強く、環境にやさしいグリーン基地局の実用化が急がれているわけだ。

ドコモは将来、基地局同士で電力を融通しあう「ドコモ版スマートグリッド」構想の研究も進めている。
将来的には、「基地局で使用する全ての電力は基地局で生み出す」(同)計画だ。
【松元洋平】

SankeiBizより

投稿者 trim : 2012年08月13日 11:26