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2013年06月24日

鉄粉で土壌、地下水汚染を浄化

鉄粉といえば、携帯の使い捨てカイロの中身として一般にもなじみが深い。

しかし、実は鉄粉の用途として最も多いのは産業用部品の材料。
その一方で、このところ注目が高まっているのが土壌や地下水の汚染を浄化させる用途だ。

神戸製鋼所は「エコメル」という商標で、再開発用の土地などにおける環境浄化に売り込んでおり、さらなる販売拡大を狙っている。


鉄粉は一般に加工しやすいため、焼き固めて複雑な形状の自動車部品として用いられるなど産業用が大半を占める。
神鋼は、電炉などで溶かした鋼を高圧水ジェットで微細に砕き、それを乾燥させた後、さらに還元させるなどして鉄粉を生産している。
生産拠点は兵庫県の高砂製作所で、年約7万トンが作られている。

同社は産業用に加えて、2002年に「エコメル」の販売を開始。
工場跡地などの土地再開発を中心に、土壌などの汚染対策として浄化性能をアピールしてきた。
工場跡地では、2003年に施行された土壌汚染対策法にのっとり、ベンゼンやトルエン、ジクロロメタンのほか、シックハウス症候群のもとにもなるホルムアルデヒドといった揮発性有機化合物(VOC)を分解するのに鉄粉を用いる。
鉄の還元反応を利用して、塩素を吸着することで、ジクロロエチレンやトリクロロエチレンといった有害物を最終的にエチレンとして無害化する仕組みだ。

代表的な使用例としては、汚染地下水がある場所に止水壁を設け、その浄化壁にエコメルを入れる。
すると、浄化壁の土の粒子の中に、さらに微細な鉄粉が入り込み、ここを汚染水が透過する際に浄化される。
また、2010年の土壌汚染対策法改正を前に、トンネル掘削工事の際の汚染処理に用いる重金属を吸着する新たな「エコメル」を開発。
2009年から販売している。
こちらは主にヒ素を鉄イオンに吸着させて、無害なヒ酸鉄の結晶へと化学反応させる仕組み。
人体に必須ながら、過剰摂取すると極めて毒性の強いセレン対策としても、「鉄粉以外にない」とされるほどの有効性が指摘されている。

重金属の吸着では、重金属に汚染された土を盛り土する際に、エコメルを使った吸着層を下に敷き詰めることで、下にたまる重金属汚染水を吸着層が浄化する。
従来は汚染の可能性がある土を鉄粉と均一に混ぜ合わせて浄化を図っていたが、吸着層を敷き詰める方法にすることで、「コストで約2割、工期については約6割」(同社)も削減することが可能という。

こうした土木分野に加え、可能性はさらに広がっている。
水処理については2010年からプラントで試験を実施。
カドミウム汚染米の対策でも試験段階に入っており、農業分野での活用も期待されている。
このほかにも、自然環境保全で何らかの成果を得られないか、実験が進められている。
同社では、「社会ニーズを先取りした開発で、より社会貢献ができれば」と話す。

安定した品質で、大量に供給することが可能であることなどから、大規模工事にも有効という。
同社は「安心できる土地再利用に貢献したい」と話す。
今年2月には国土交通省の新技術情報提供システムにエコメルが登録された。
国交省の“お墨付き”を受けた格好で神鋼は採用拡大に向けた技術提案活動をさらに積極的に推進していく方針だ。
【兼松康】

SankeiBizより

投稿者 trim : 2013年06月24日 11:22