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2014年02月04日

「日本橋再生」

日本橋川に空を取り戻す―。
8年前に提言された日本橋川を塞いだ高速道路の撤去問題が東京五輪の開催決定を機にクローズアップされてきた。

再開発の「日本橋再生計画」を進める三井不動産は“水都再生”をキーワードに高速道路撤去の必要性をアピール。

老朽化した首都高速の更新が喫緊の課題となり、首都圏の環状道路整備も進むなど撤去実現に向けた環境も整いつつある。


日本橋川を塞ぐように首都高速道路が建設されたのは1964年の東京オリンピックの前年だ。
戦災復興による道路整備が計画どおりに進まず、五輪へ向けて都心部の交通混雑を回避するため川や沿岸部などの空間を利用して首都高が整備された。
その後、日本の高度経済成長を支える重要インフラとして活躍したが、すでに50年が経過して更新時期を迎えている。

日本橋川から高速道路を撤去しようとの声は、バブル崩壊後の1990年代後半から聞かれるようになった。
高速道路が美しく快適な都市空間を損なっているとの認識からだ。
国土交通省でも2001年から有識者会議を設置し議論を始め、2006年に当時の小泉純一郎首相の指示で提言「日本橋地域から始まる新たな街づくりにむけて」がまとめられた。

同提言では、高速道路を地下化して移設するのに約4,000億~5,000億円の費用がかかると試算。
地域が受ける利益に応じた地元負担などで約2,000億円、将来の大規模再構築に必要な費用約1,000億円を先取りすれば、実質的に約1,000億~2,000億円の追加費用で実現できるとした。
だが、直後に小泉首相が退任したため構想は具体化しなかった。

提言から8年が経過して首都高を取り巻く状況は大きく変わりつつある。
いよいよ更新時期が迫り、昨年12月には首都高速道路会社が2014年度から実施する首都高の更新計画を策定。
10年程度で6,300億円をかけて5区間を大規模更新するほか大規模修繕も実施する。
日本橋を通る都心環状線の竹橋-江戸橋間は大規模更新の対象となった。

一方で、長年の懸案だった首都圏3環状道路の整備が進み、2020年までに中央環状線が全線開通し、外郭環状道路と圏央自動車道も9割近くが完成する。
これによって通過交通量が6割以上を占めるといわれる首都高の負担軽減が見込まれる。

「世界の主要都市を見ても、中央環状線の内側に高速道路が走っているところはない」―。
日本橋再開発計画を進める三井不動産の菰田正信社長は、先月28日に開いた記者会見で首都高のあり方について改めて問題提起した。
1日100万台近い車両が利用している首都高の路線見直しは簡単ではないが、大規模更新の機会をとらえて高速道路のあり方を議論することは必要だ。

「2020年の東京五輪の時が最大のチャンス。首都高には交通規制がかかるだろうから3環状の効果などを実際に検証できる」(岩沙弘道三井不動産会長)と、五輪開催時の交通規制がうまくいけば、撤去の議論が加速する可能性を指摘する声もある。

日本橋での高速道路撤去は、都市景観だけでなく、都市における公共空間の確保の点からも意義が大きい。
東京の都心部では、多くの人々が集まって祝祭イベントを催すことができる広場のような公共空間が非常に限られている。
皇居前広場はあるが、もともとイベントを催すような空間ではなく、大規模な祝祭イベン トは銀座の中央通りで開催されることがほとんどだ。

三井不動産は「COREDO日本橋」などの商業施設開発に続き、今後、“第2ステージ”として日本橋の中央通り沿いを中心に8カ所の再開発を計画する。
だが、近隣には大きなオープンな公共空間がないのが難点。
高速道路が撤去できれば、銀座のように中央通りを最大限に活用しやすくなり、日本橋川の水辺や船などを利用して大規模なイベントを開催できる。
まさに日本橋再生の鍵を握ると言って過言ではない。

公共空間の整備では、日本橋とは東京駅を隔てて反対側の丸の内地区でも2002年から東京駅丸の内駅前広場の整備計画が進んでいる。
当初は10年度末に完成する予定だったが「まだ具体的なデザインを検討中」(東京都)という段階。
同地区の開発を多く手がける三菱地所でも大規模イベントに対応できる広場の実現 に力を注ぐ。

「前回は日本が高度成長に向けたオリンピックだったが、今度は成熟社会に向けたオリンピック。人々が文化やスポーツなどを楽しめるような公共空間のあり方を議論すべきだろう」(青山佾)明治大学教授=元東京都副知事)。
2020年に向けてオフィス、商業施設、住宅などの再開発計画はめじろ押しだが、広場、公園、水辺などオープンな公共空間をデザインすることも、東京の魅力向上には欠かせない大きなテーマだ。

SankeiBizより

投稿者 trim : 2014年02月04日 11:00