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2009年01月14日

「いぶき」21日に打ち上げ

深刻化する地球温暖化の将来予測と対策に役立てるため、世界初の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」21日に打ち上げられる

宇宙航空研究開発機構(JAXA)や国立環境研究所、環境省が共同で開発し、温暖化の主因とされる二酸化炭素とメタンの大気中濃度を、全地球規模で網羅的に観測する。

いぶきが観測する二酸化炭素とメタンは、温暖化への寄与率が合わせて8割以上に達する。

観測点は、極域を除く全世界約5万6,000カ所。
現在の日米欧を中心とした地上約280カ所から飛躍的に増え、海洋域や高山帯などでも、継続的にデータを取得できる。

1つの観測点は直径10㌔で、通常158㌔間隔に置かれ、同一地点を3日に1回観測する。

濃度は、赤外線の特定の波長が二酸化炭素やメタンによって吸収される特質から割り出す。
センサーで、地表や大気中から放射されるなどした赤外線を捕らえ、吸収率を分析する。

分析に用いる赤外線は、地表付近の観測に適した短波長赤外線と、上空や夜の観測に適した熱赤外線の2種類。
全世界の平均濃度が約380ppmの二酸化炭素では、計画上の観測誤差が約1%(4ppm)で、メタンも約2%にすぎない。
精度は、地上観測データなどと比較して検証する。

ただし、観測点の天候が悪いと雲による赤外線吸収が起きるので、観測は快晴の時に限定される。
この弱みを克服するため、同一地点上空を頻繁に通過し、快晴に遭遇する確率を高めた。


動作確認を経て早ければ4月中には、初めて全世界の観測結果が出そろう。
吸収率データは10月末から、濃度データ来年1月から、一般向けに公表される。

環境研は、全世界の二酸化炭素およびメタン濃度図を作成。
さらに、大気の流れなども加味して、数千㌔四方ごとの吸収・排出量の推定図も作る。
これらは毎月の更新を目指し、時期による増減も明らかにする。

いぶきの観測は国境に無関係だが、地球規模で定期的に濃度や吸収・排出量が分かれば、国や地域の温暖化予測の精度向上や効果的な対策に役立つ。

環境省の担当者は、「人間活動による温暖化が一目でわかれば、誰でも実感がわいてくる」と世論喚起への期待も寄せる。

環境研や環境省が関与する衛星はいぶきで3基目。
しかし、「みどり」(1996年)や「みどり2号」(2002年)はともに短期間で不具合を起こし、運用停止の憂き目を見た。

そこで、いぶきは、予備システムを充実させる一方、任務を濃度観測に単一化して構造を簡素化した。

その結果、衛星は大幅に軽量化。
ロケットの打ち上げ能力が余ったため、公募で選ばれた学生や中小企業の小型衛星など7機も、相乗りが決まった。

望遠カメラで分解能30㍍の地上撮影を試みる、重さ約8㌔の「PRISM」を開発した中須賀真一・東京大教授(航空宇宙工学専攻)は、「打ち上げ機会の提供は、人材育成や将来の新しいビジネス創出につながる」と相乗りの意義を強調する。

開発費183億円を費やしたいぶきは、H2Aロケット15号機で、JAXA種子島宇宙センター(鹿児島県)から打ち上げられる。


産経新聞より

投稿者 trim : 2009年01月14日 10:23