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2013年12月23日

植物由来の包装フィルム拡充


食品などの包装用フィルムで国内最大手の大日本印刷が環境負荷低減の取り組みを強化している。

今夏には植物由来原料を使ったバイオ包装フィルム「バイオ マテックシリーズ」に、水蒸気や酸素の内部浸入を効果的に防ぎ、透明で中身も見える新製品を追加し、食用油の容器素材として採用された。



同社はバイオ包装フィルムの製品ラインアップが増えることで、普及が加速し、一層の石油依存度低下や二酸化炭素(CO2)排出削減につながるとみている。

納入を開始したのは、「バイオマテックIB-PET」と呼ぶポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム。
昨年3月に先行して採用が始まったバイオPETフィルム「バイオマテックPET」をベースに開発した。

一般的な石油由来のPETフィルムは、モノエチレングリコール(MEG)とテレフタル酸から作る。
これに対してバイオマテックPETは、MEGを植物由来のものに置き換えた。
植物由来MEGは、サトウキビから砂糖を抽出した際の「廃糖蜜」と呼ぶ残留物を発酵・蒸留させて得る。
PETフィルム原料に占めるMEGの割合は重量比で3割。
この部分が植物由来に置き換えられ、石油を使わなくなるため、環境負荷低減効果は大きい。

このためバイオマテックPETは、石油から作る場合に比べて原料ベースで約3割の石油使用量、18%のCO2排出量を削減できるという。
このバイオマテックPETをベースにしたIB-PETは、蒸着と呼ぶ製造プロセスにより透明でありながら、高いバリア性能を持つ。

第1弾として味の素グループのJ-オイルミルズ(東京都中央区)が採用した食用油はパウチ容器タイプ。
食用油はプラスチックボトル入りが普通だが、同じように落としたり、圧力をかけたりしても破れないうえ、透明で中身を確認できる。
テーブルの上に置いて立たせられるのも同様だ。

その上、パウチ容器は廃棄が楽だ。
しかも植物由来原料を使っていることでボトルに比べて環境負荷が少ない。
このため環境意識の高い消費者など、新たな客層を掘り起こしそうだ。

原料が同じペットボトルでは植物由来原料の採用が進み始めているのに対し、包装用PETフィルムはバイオマテックPETを除き、まだほとんどない。
透明で高いバリア性能を備えたフィルムは世界初。
IB-PETという新たなラインアップを手にした大日本印刷は、さらに他社を引き離した格好だ。

包装用フィルムは、ペットボトルより使用量が少ないだけ量産効果が働きにくく、バイオ原料の“弱点”である価格の高さがネックになりやすい。
同社包装事 業部の斎木真司開発本部長は「製造プロセスをギリギリまで効率化したほか、性能を維持しつつ、張り合わせる他のフィルムを一部薄くして使用量を減らすなど工夫した」と話す。
これにより、最終的な容器の製造コストは、石油由来に比べ1~2割増に抑えることができた。

ここ数年の原油高で、石油由来製品との価格差は縮小しつつある。
しかも、これから採用が広がれば、一定の量産効果も期待できる。同社では将来的に、同等レベルまで価格を引き下げたい考えだ。

「枯渇資源である石油の使用量を減らす一方、持続可能な形で製品を提供し続けることを使命として開発を進めてきた。顧客企業や生活者の環境意識の高まりに応えたい」。
斎木開発本部長はこう意気込む。
今後は食品だけでなく、日用品や医薬品など幅広い分野で採用を働きかけていく考えだ。
【井田通人】

SankeiBizより

投稿者 trim : 2013年12月23日 11:39